去る'08年6月6日、惜しくも銀河の彼方に旅立たれた『宇宙軍大元帥』
野田昌宏閣下の遺された“キャプテン・フューチャー”シリーズのオリジナル長編。
原作者であるエドモンド・ハミルトン氏の御遺族の了承を得た上で著された作品であり、
SFマガジン誌1,983年7月増刊号“キャプテン・フューチャー・ハンドブック”に
掲載されたという。 確かその号は持っていたような気がするが、
本作品を拝読した記憶は無い。 記憶力が減退したか ... ?
その後、書籍化されることなく眠っていた『幻の作品』を、発表から27年後に読んでいる。
さすがに“キャプテン・フューチャー”を日本に紹介した第一人者の
ペンに因る作品だけあって、文章に違和感は無い。
ただ、原作者への敬意の発露か、あるいは著者の照れなのか、
キャプテン・フューチャー自身よりもアンドロイドのオットーとロボットのグラッグのほうが
「キャラが立って」しまい、キャプテンの存在感がやや希薄な印象を受けた。
また、作中で古代ミイラが重要な役割を果たすのだが、彼らを従順なゾンビよろしく
使役する為のメカニズムがあまりにチャチなのが気になった。
ミイラを登場させねばならない事情は解るのだが、ミイラに拘る必然性も無い。
例えば珪素質の古代ロボットなど、代役はいくらでも考え付くと思うのだが ...
時代錯誤とは言い過ぎだが、このレトロチックな風味こそが
“キャプテン・フューチャー”の醍醐味であることは理解している上での
印象である。 (ちなみに私はホラーが大の苦手。 ミイラ? ... やめてっ!)
ともあれ、フューチャーメンの敵役が、あの『火星の魔術師』こと
ウル・クォルンとその情婦ヌララとくれば、それだけで燃える設定ではないか。
原作者のエドモンド・ハミルトン氏とその奥方であったリイ・ブラケット女史。
そして“キャプテン・フューチャー”シリーズを翻訳された野田昌宏氏を偲びながら、
四の五の言わず素直に楽しみたい逸品である。
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