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### 24.Dec.2,011 ###


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ザ・コールディスト・ウインター
朝鮮戦争 (上)
デイヴィッド・ハルバースタム 文藝春秋

以前、“REVIEW 07-003”にも記したが、
朝鮮戦争に関するドキュメントはあまり見かけないような気がする。

日本の敗北で終わった太平洋戦争から僅か5年後の1,960年6月25日、
北朝鮮の僭王・金日成が始めた戦争は、一時的に
朝鮮半島の殆ど全土を掌握するまでに至ったが、
国連軍(実質的には米軍)の仁川上陸戦の成功をきっかけに攻守逆転。
北朝鮮軍は38度線の遥か北、遂に中朝国境(!)にまで押し返されてしまうが、
ここで中国が参戦。 その裏には共産主義の総本山・ソ連が控えているのは明白で、
朝鮮半島を巡る内戦は一挙に第3次世界大戦に発展する気配が濃厚に漂い始める。
その懸念は開戦当初から米国政府には在り、朝鮮戦争を内戦の範囲に止めようとの
配慮はしたものの、朝鮮戦争を直接(?)指揮した東京・進駐軍本部は一考だにせず、
逆に民主主義対共産主義の構図を鮮明にせんと行動する始末。

## こうなるともう、宗教戦争もかくやといった事態 ...

国連軍の指揮官、ダグラス・マッカーサーは米国大統領トルーマンとの対決姿勢を露わにし、
中国参戦を機会に中ソとの全面戦争に突入せんとする始末。
幸い(?)戦争は世界大戦に発展することは無く停戦に至り、
膠着状態のまま現在に至るわけだが、一歩間違えば
米中ソの間で熱核兵器の応酬が勃発するところであっただろう。

考えてみれば、米国の裏庭で起きた“キューバ危機”よりもシリアスな事態であった筈なのに、
『朝鮮戦争』の研究が疎かにされているように感じられるのはなぜなのだろう。
なにか適当なドキュメントはないものか ... と、たどり着いたのが本作品。

上下2巻で構成された本作品の上巻は朝鮮戦争勃発前夜から中国参戦まで、
下巻は中国参戦から朝鮮戦争の停戦までを記述している。
当時の戦場の様子のみならす、戦争をコントロールした米国議会の政局も丁寧に
描き込んであり、混乱した世相のもとに遂行された戦争がいかに混乱したものであったか、
理解できるように仕掛けが施されている。
『政治は妥協の産物』 ... 等とはよく耳にするフレーズだが、本書に因れば
朝鮮戦争当時の米国の政局は『妥協』を通り越した混迷状態であったようで、
これでよくあの事態を乗り切ったものだと思う。

上巻を読破した時点での感想になるが、
朝鮮戦争が限定戦争で停戦に至ったのは行幸ではあったものの、
正直、米国の失策の感は免れない。
北朝鮮の金日成、中国の毛沢東、そして米国のトルーマン。
その3人を影から手玉にとったのがソ連のスターリンで、
米国大統領トルーマンと帝王きどりのマッカーサーの間の反目を
巧く利用されてしまったように思われてならない。
READING PESOGIN
## 10年越しで上梓された著者渾身の1篇。
## 最後の著者校正を終えた翌週の2,007年4月23日、
## 次の作品用のインタビューに向う途中、
## 著者は交通事故で亡くなられたとの由。
## この作品、徒やおろそかにはできません ...

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