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### 27.Dec.2,011 ###


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F-86 セイバー空戦記
ダグラス・K・エヴァンス 光人社
NF文庫

朝日ソノラマ航空戦史シリーズ“朝鮮上空空戦記”改題。
本書はその増補改定版。

太平洋戦争やベトナム戦争の研究書、空戦記の類の
書籍は星の数ほど見かけるものの、
朝鮮戦争を扱った書籍を目にする機会は滅多にありません。
これは日本だけの現象かと思いきや、実は国連軍の中核として
参戦した米国においても同様のようです。
米国で研究書が発表されないので、日本でも同様な
傾斜を示していると見たほうが正確なのでしょう。

ANG(州空軍)の予備役パイロットであった著者は、
朝鮮戦争の勃発により現役復帰召集を受け、
1,951年05月から極東への派遣任務に就きます。
その07月から翌年の03月まで、当時最新鋭の制空戦闘機
F-86 のパイロットとして朝鮮戦争に従軍。
半年間 / 敵地出撃100回の任務を終え、生還を果たします。
本書を読んんでみると、初期の F-86 は必ずしも
ライバル機 Mig-15 を凌駕していたわけではなく、
F-86 パイロットは Mig-15 を手強い相手として
認識していた事実に驚きました。

研究が進んだ現代でこそ、Mig-15 も必ずしも万能ではなく、
多くの問題を抱えていたことが判ってきましたが、
文字通り生命のやり取りをしていた当時では、
相手の長所だけが目に付いたことでしょう。
F-86(A型やEの初期型)はパワー不足の感が否めず、
高空での運動性能や、急降下時の速度性能等では
Mig-15 の後塵を拝していたようです。
それ以上に問題だったのは F-86 の機数不足で、
著者が朝鮮から離れる頃にはパイロットが余っているような
状態だった時期もあったようです。
F-86 対 Mig-15 のキル・レシオは、
最終的に1対10〜12程度に落ち着き、
F-86 の圧勝との結論が出てはいますが、あるいは
本書を読んだ限りでは実力伯仲、
Mig 有利といったイメージしか浮かびません。
パイロットの技量の差と、彼我の戦略、
戦術の良し悪しが相当影響しているのでしょうか?

停戦から半世紀が過ぎようとしているにもかかわらず、
朝鮮戦争の記録が少ない昨今、一人のパイロットの目から見た
朝鮮戦争の生々しい記録として、本書は貴重でありましょう。


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