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パロマーの巨人望遠鏡 (上 / 下)
D.O.ウッドベリー 岩波書店 / 岩波文庫 青942-1 / 2

私がまだ御幼少のみぎり(ヲイ)、パロマー山天文台の5メートル望遠鏡といえばまだ、
世界最大の天体望遠鏡であり、最先端科学のシンボルであった。
現代では既に、地表に設置された光学望遠鏡のみならず、
例えばアレシボの電波望遠鏡やら、衛星軌道上のハッブル宇宙望遠鏡など、
パロマー山の天文台での実績を遥かに凌ぐ成果を挙げ続けている
宇宙観測機器は枚挙に暇がない程ではあるが、それでもまだ“パロマー”の名は、
淡いノスタルジアを孕みながら、かつての少年の胸にさざ波を立てるのである。

確かこの作品は小学生の頃に、少年向きに再構成されたものを拝読したように思う。
以来、実に数十年ぶりの再読となろうか。
本作品は、若くして太陽の権威と目された天文学者
ジョージ・エラリー・ヘール博士の伝記であり、20世紀前半のアメリカ天文学史であり、
ウイスコンシン州レーク・ジェネバのヤーキス天文台に設置された40インチ、
カリフォルニア州マウント・ウイルソンの100インチを経て、
同州パロマー山上に据えられた200インチ反射式天体望遠鏡の建造記録でもある。
ヘール博士の情熱はアメリカに、当時世界最大の天体望遠鏡を建造、
設置させるに至るのだが、彼はパロマー天文台の竣工を待たずに他界してしまう。
故人の無念は如何ばかりであったろうか。

ヘール博士の情熱もすさまじいが、CAD / CAM はおろか、近代的な電子計算機すら無い時代に
200インチ天体望遠鏡を実現させてしまうアメリカ合衆国の国力こそ恐るべきものだ。
また、あの第2次世界大戦を跨いででも天文台を完成させてしまうアメリカの底力には
感嘆を禁じ得ない。 竣工後のパロマー天文台の業績に関しては言わずもがなであろう。

訳文が古くて硬質であり、また文脈が未整理な部分も散見されて、
とても読み易いとは言えないが、本作品は20世紀前半の天文学史、
とりわけパロマー山天文台に関しては最良のテキストのひとつだと思う。
READING PESOGIN
## アメリカ合衆国って、すごいよね ...


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