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瑠璃の翼
山之口 洋 文芸春秋

ノモンハン事件。
1,939年05月11日から同年09月16日(休戦協定締結)まで、
満州国 / モンゴル人民共和国間の未確定国境地帯において勃発した国境紛争。
紛争の当事者は、表面的には満州対モンゴルではあるが、
実質的には日本軍(関東軍)対(モンゴルと相互援助協定を結んでいた)ソ連軍であった。
当初は両国の国境警備隊同士の小規模な武力衝突であったが、
事態は瞬く間にエスカレートし、全面武力衝突の様相を呈した。
日本は対ソ戦不拡大の方針を堅持していたものの、関東軍の上層部が暴走し、
独断で戦線を拡大。
一方のソ連は、日本を徹底的に痛打することで対ソ連戦不利のイメージを
日本に植え付け、欧州と極東とを相手にしたニ正面同時作戦を回避する思惑もあり、
結果として、武力衝突はエスカレートの一途を辿った。
兵站と機械化で劣り、確たる戦略的目的も持たぬ日本・関東軍は、
明確な目的を持ち、遥かに凌ぐ物量を誇るソ連軍に敗退した。

本作品の主人公、野口雄二郎は陸軍飛行第11大隊、通称“稲妻戦隊”を率い、
7.7mm 機銃2丁しか持たぬ 97式戦で、ソ連空軍に痛撃を負わせ続けた名指揮官であり、
本書は彼の視線で眺めたノモンハン事件の全貌である。
ちなみに本書の著者は、野口雄二郎氏の実の孫にあたるという。
小説として著された本書は、それ故に情緒的に割り引く必要があるかもしれないが、
軍人としての本分を果たそうとした野口雄二郎氏の高潔な姿と、
ノモンハン事件を自らの立身出世の機会として利用しようとした関東軍の作戦参謀らの
姿の対比が哀しく、戦争の卑劣さ、愚劣さを思い知らされる。

事件後、トカゲの尻尾きりの要領でノモンハン敗戦の責任の一端を押し付けられて
陸軍を追われ、以後は満州国空軍の育成に力を尽くした雄二郎氏だったが、
太平洋戦争終戦直前に満州になだれ込んできたソ連軍に、満州国空軍の
最高責任者として自ら逮捕される。
以後約10年、シベリア西端のイワノヴォ収容所において胃癌で死去するまで、
彼の地で抑留者として過ごしたという。
さぞや無念であったろうと思う。
READING PESOGIN
## 実のお孫さんによって著された作品は、重い。
## 巻末の『あとがき』では目頭が熱くなった。

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