### Recent UPDATE ###
### 15.Dec.2,011 ###
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REVIEW 11-009 |
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ドウエル教授の首
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アレクサンドル・ベリャーエフ
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東京創元社 創元SF文庫
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作品の評判は小学生の頃から聞き及んではいたが、その設定が
あまりにグロテスクだったので、どうしても紐解くことができず、今日に到る。
最初の4章ほどを読み切れば、後は比較的すんなり読めたが、
やっぱりそこまでが辛かった。
死者を蘇らす研究に没頭していた外科医ドウエル教授は死後、
弟子であるケルン教授の手により頭部を切断される。
蘇生の見込みのない体から分離されたドウエル教授の頭部は、防腐・
蘇生処置が施され、ドウエル教授の研究成果を独り占めせんとする
ケルン教授のアドバイザー兼実験材料として生き長らえていた ...
想像してみて欲しい。
薄暗い実験室の片隅に置かれた机の上に乗せられた、剥き出しの“生首”の姿を。
下手な怪談よりよっぽど恐ろしい図ではないだろうか?
ただ、このエグい描写に慣れさえすれば、後は悲しいロマンスあり、
精神病院という牢獄に捉われたヒロインの救出劇ありで、
少々ご都合主義的な展開ではあるものの、エンターテイメント小説としても
楽しめる仕掛けが待っている。
S.F.が“暗喩の文学”であるならば、『ドウエル教授』、
『ケルン教授』、『ケルン教授によって生首にされた実験体』、
そして『ケルン教授の非道を暴いたドウエル教授の息子たちの一派』は
何を指すのだろう?
『ドウエル教授』は帝政ロシアに革命をもたらし、ソビエト連邦の礎を築いた“レーニン”で、
ドウエル教授の業績を盗もうとした『ケルン教授』は“レーニン後のソ連指導者”、
例えば ... スターリン等の独裁者であり、『ケルン教授によって作られた生首』は
“独裁的指導者によって虐げられたソ連の民衆 - 正に手も足も出せない存在”を
シンボライズしているように思われてならない。
『ケルン教授の非道を暴いたドウエル教授の息子たちの一派』は当然、
“ソ連を再革命し、民主化を希求するソ連民衆”ということになるのだが、
さてどうだろうか ... ?
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## 評判に違わぬ名作ではあるものの、
## 今では入手が難しいようなのが残念だ。
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REVIEW 11-009 |
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