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### 15.Dec.2,011 ###


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月の記憶 (上 / 下)
アポロ宇宙飛行士たちの「その後」
アンドリュー・スミス ヴィレッジブックス
N ス 3-1 / 3-2

自国開発の有人宇宙機を飛ばしたアメリカやロシア(旧ソ連)、中国の他、
米国のスペースシャトルやロシアのボストークに便乗する等して、
比較的低高度の地球周回軌道に昇った人類は、
日本人も含めて200人を超えるようだが、
それ以遠に向かった有人宇宙船は、現在に至るまでアポロ・シリーズだけ。
そのアポロに乗って月を目指し、実際に月面に足跡を記したのは
僅か12人のアメリカ人のみである。

本書の著者であるアンドリュー・スミスは、アメリカ生まれのイギリス人である。
1.999年07月09日、著者が、12人のムーン・ウォーカーの内の一人である
チャーリー・デューク(アポロ16号月着陸船パイロット)とその奥様に
雑誌記事用のインタヴューを行っている最中に飛び込んできた、
もうひとりのムーン・ウォーカー、ピート・コンラッド(アポロ12号船長)の
訃報にショックを受け、存命者が9人となってしまったムーン・ウォーカーたち
(とりもなおさず彼らは著者にとってのヒーローである)全員に直に面会し、
あの月着陸ミッションの意味を再検証しようと思い立つところから始まる。

人にとっての“旅”とは、どんな意味を持つのだろう。
“旅”とはつまり、いつもとは違う場所に身を置き、見慣れない風景を目にし、
食べ慣れない食事を味わい、異なる風俗、風習を体感し、異なる空気を嗅ぐ、
という事であろう。
そして人は新しい視点を得、過去の自分を見つめ直すきっかけを得るのだ。
ムーン・ウォーカー達や、その他のアポロ計画に携わった方々を訪ね、
著者はアメリカを巡る。
それは月の周回軌道や月面から地球を振り返った旅人たちを訪ねる旅であった。

著者はアストロノートでもなければ、航空宇宙のエンジニアでも科学者でもない、
ただの1市井の人であり、いうなれば我々一般人と同等の視線の持ち主である。
政府の公式見解を鵜呑みにしないその視線は、アポロ計画の意義を再検証する
切り口としては斬新ではあるが、どうにかすると著者個人のノスタルジックな思い出話や
当時の米国の社会情勢や風物描写に流れがちで、東洋の一住人が共感するには難しい
脱線話(と評するのは酷だろうが)は読んでいて辛かった。
インタビューの内容も、生に近い情報が主で、整理されているとは言い難く、
読破するのが正直辛かったが、著者と共にアポロの意義を考える為には
最良のスタイルであったことは理解できる。

二度と戻らぬあの'60年代に思いを馳せながら、間違いなく当時の最高のヒーローであった
アストロノートたちの“現在”を訪ねる旅路の果てに、著者と読者は何を見るのか。
ノン・フィクションとしては軽過ぎ、エッセイとして読むには重過ぎるが、
“一風変わったアポロ計画評”として読んでみるのも悪くはなかろう。
READING PESOGIN

## 言われてみれば、地球周回軌道以遠から直に地球を眺めた人類は、
## アポロ計画で月に向かったアストロノーツだけなんだよなあ ...


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