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### 15.Dec.2,011 ###


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落日燃ゆ
城山 三郎 新潮社

太平洋戦争敗戦後に開かれた東京裁判において有罪判決を受け、
処刑された7人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官“広田 弘毅”(元首相、外相)。
その生涯を、広田弘毅自身が抱いたであろう感情を極力そん度することなく、
ただ事象・事実のみを積み重ねることで描いた伝記文学書。

不勉強であった。
元首相・外相であった“広田 弘毅”に関しては、その御名前を存じ上げているくらいで、
彼の成した業績や、A級戦犯として処刑された経緯などについて、自分は全くの無知であった。

日華事変や太平洋戦争開戦前夜の、あの難しい時期において共存共栄の平和主義を貫こうとし、
統帥権という実体の無い権利を振りかざして独走する横暴な軍部(特に陸軍)の
度重なる妨害にもめげず、国のために粘り強く海外諸国との交渉を重ねた広田。
それはまさに、身の危険を顧みない(226事件等を思い出されたい)無私の国事行為であったが、
独走を重ねる軍事行為との矛盾はいかんともし難く、遂に結実せずに終わった。

あげくの果てには敗戦後、確たる戦略もなく始めてしまった戦争を指導・推進した
軍人らとともに獄に繋がれ、A級戦犯中、唯一の文官として処刑されてしまう。
戦争を止められなかった政府閣僚としての責任を全うするため、
自己弁護を一切拒否した挙句の覚悟の獄死であったという。
その、静かだが苛烈な広田の生涯を、本書は余すことなく伝えていると思う。
かくも立派な外交官、後に請われて政界に身を置くことになったが、
あの難しい時代の日本に居てくれた奇跡に驚くとともに、
その有意の志をみすみす見殺しにしてしまった不幸に瞠目を禁じえない。

日本人として、是非御一読をお勧めしたい一冊であります。

READING PESOGIN

## 東京裁判とは、裁判の名を借りた、
## 戦勝諸国の復讐劇に他ならなかったのだなあ ...
* * * * *
## それにしても際立つのは、外交官時代に
## 広田と同期であった吉田茂の脂ぎった人間臭さ。
## 高潔な広田との対比も興味深かった。


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