本書の奥付に拠ると、初版の発行は1,980年6月27日。
私が入手したのは再版だが、それでも発行は同年の8月1日である。
なんということだろう。 30年近くも積みっぱなしの文庫本を今更紐解いている。
著者のマンリー・W・ウェルマンとウェイド・ウェルマンは父子だそうだが、
寡作な作家だったのか、本書を紐解いてもそれ以上の情報は無い。
わずかにエドモンド・ハミルトンの“キャプテン・フューチャー”シリーズの内、
“小惑星要塞を粉砕せよ!”の著者としてマンリー・W・ウェルマンの名が見受けられるが、
同一人物なのかどうかさえ定かでは無い。
時は1,902年。 所は英国ロンドン。 地球は未曾有の危機に陥っていた。
火星から発進したと思しき謎の物体が地表に落下。 そこから現れた異形の機械が
怪光線を発し、毒ガスを撒き散らしながら周囲を制圧。 宇宙人の地球侵略が始まったのだ。
そのロンドンに居合わせたのが、あの“シャーロック・ホームズ”と“チャレンジャー教授”。
彼らが地球の危機に如何に立ち向かっていったのか?
御存知 H.G.ウエルズの“宇宙戦争”と、その前日譚“水晶の卵”を下敷きに、
同時期にロンドンで活躍していたはずの、サー・アーサー・コナン・ドイルが生み出した
2大ヒーロー、“ホームズ”と“チャレンジャー教授”、そして“ワトソン医師”の
手記の形で再構成した意欲作。
私はホームズ・シリーズを読み込んだわけではないのでよく判らなかったが、
巻末の解説に拠るとシャーロッキアンも思わず唸る仕掛けもちりばめてあるようで、
“マラコット深海”や“毒ガス帯”、“失われた世界”等のチャレンジャー教授シリーズに
馴染まれた往年のSFファン以外のホームズ・ファンにもお奨め。
登場するホームズ、ワトソンのキャラクター描写に違和感はないが、
あのチャレンジャー教授の描写がいかにも“チャレンジャー教授”で、嬉しかった。
H.G.ウエルズの“宇宙戦争”となると、『古典』というよりも『カビの生えたクラッシック』といった、
いささか礼を失したイメージが強く、それが長年の積読の理由であったのだが、
正直もったいない事をしたと後悔しきりである。
## ハヤカワSF文庫版の“小惑星要塞を粉砕せよ!”、ウチの本棚にあったかなぁ ...
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