### Recent UPDATE ###
### 24.Dec.2,011 ###
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REVIEW 10-032 |
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ホット・スクランブル 緊急発進
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高野 裕美子
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徳間書店
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高野裕美子女史の著作を拝読するのは初めてである。
一読した限り、文体は非常にこなれた感じで、読み易い。
また、流石に女流作家の作品だけあって、キャラクターの人物描写、
特に女性の内面描写は特筆すべきものがあると思う。
ただ、航空冒険小説としての完成度は低いと断じざるを得ない。
ストーリーが中途半端で不完全燃焼、
あるいはフレーム・アウトしたままの墜落感が拭い切れない。
序盤、主人公の故郷で家族が惨殺されるのだが、
主人公の父親が勤める会社が開発した新素材を、
中国産ステルス機に無断流用するための産業スパイ事件に絡んだ惨殺劇、
という繋がり以上の展開は無く、以後のストーリーにほとんど干渉していない。
事件後、主人公の妹の婚約者が実行犯らしき男を中国国内で目撃したり、
中国人スパイ団を乗せた船が日本海で遭難し、
航空自衛隊の救難ヘリに救われたり、といったエピソードは挿入されるものの、
それ以上の展開も見受けられない。
拉致されたと思しき主人公の妹(身重)の行方も謎のままだ。
また、航空冒険小説にタイム・スリップという要素を持ち込むのも
ある意味強引で、いかがなものかと思う。
未来の航空戦を描きたいのなら未来小説として描くべきで、
現代戦と未来戦をパラレルで描くのは無理がありすぎる。
端的に言って、小説として許された尺のなかにアイデアを詰め込みすぎて
消化不良を起こした失敗作としか思えない。
編集と作家の力学上の問題があったのかもしれないが、
アイデアを消化し尽くす為に必要なページ数が圧倒的に足りないのだ。
本作品中に、続編を作れそうなネタの仕込みは終わっているのだから、
あとは著者の運動次第といったところだろう。
単一の作品としては失敗作だが、続編があるなら読んでみたいという、
なにやら妙な感想になった。
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## 本作品を読んでいる最中に、例の尖閣諸島問題が勃発。
## 日本国の排他的経済水域内に侵入して漁を行い、
## 海上保安庁の警備船に漁船を
## 故意に衝突させた挙句に逮捕されたにも関わらず、
## 国家ぐるみの恫喝で無理やり犯罪人を釈放させたのみならず、
## 旧日本軍が武装放棄した兵器という理由で、中国臣民の為に、
## 遺棄された化学兵器の処分作業に携わっていた日本人を拉致するなど、
## 自称“発展途上国”中華人民共和国の暴虐は目に余る。
## たとえ四千年の歴史を誇ろうと、その間中ずっと中国臣民は
## 国家の統制のなすがままであり続けていたままである。
## 改革開放の正体見たり、といったところだ。
## 中華人民共和国信用するに足りずの想いを新たにした事件であった。
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REVIEW 10-032 |
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