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ミクロ・パーク
ジェイムス・P・ホーガン 東京創元社
創元SF文庫

去る2,010年7月12日(現地時間)、アイルランドの自宅から銀河の彼方に旅立たれた
ジェイムス・P・ホーガン氏(享年69歳)を偲ぼうと手にとったのが本書。

“ナノマシン”という概念は御存知かと思う。 
タンパク質等の分子サイズの部品で構成された極微機械のことで、
人体の血管を内側から清掃したり、
病気や怪我の治癒を身体の内側から直接行ったりといった、
夢のような用途が期待されているが、極微機械の組み立てから制御まで、
クリアーしなければならない課題は果てしない。
では、ナノマシンより1,000倍大きいマイクロマシン
ー 機械部品の構成要素が1マイクロメートル(= 1/1000 mm)以上、
  1ミリメートル以下の機械装置 − ならどうであろうか。
まずセンチメートル級の工作機械を作り、ミリメートル級の機械部品を作らせる
その部品を使ってミリメートル級の工作機械を組み立て、
1/10 ミリメートル級の機械部品を作らせる。
このようなプロセスを繰り返すことにより、
マイクロマシンは充分実現可能であるとしたのが本書の骨子である。

微小工作機械を扱って、超微小な機械部品を作る作業を行うのが
微小作業ロボット、“マイクロ工作員”の役目である。
この“マイクロ工作員”をコントロールするテクノロジーとして開発されたのが、
『D.N.C. : ダイレクト・ニューラル・カプリング / 直接神経接合』である。
これは人間の脳が人体を動かすために発している神経インパルスを途中でインターセプトし、
身体を動かす代わりに微小ロボットを遠隔制御させる新しい I/O 技術であり、
この技術を使えば、モーション・キャプチャー・スーツを着用したり、
人体の神経系に電極を埋め込むような外科手術を行わずとも、
自分の身体を使うのと同じ感覚で微小ロボットを動かすことができるとした
“仮想テクノロジー”である。
この“仮想テクノロジー”を巡る産業スパイ事件が、本作品の骨子。

登場キャラクターは全員、善悪の区別がはっきりしていて判り易い反面、深みが無い。
また、ストーリーも単純な産業スパイ事件の顛末である。
ストーリーが単純であることから、結末も“ホーガン流”であることが
早い段階から予想できてしまい、興醒めではあるが、
安心して読めたのもまた事実であった。
いわば全てが単純明快な一作ではあるが、その分読み易く、
エンターテイメント小説としては充分であろう。

しかし、作中に登場するような“マイクロ工作員”がもし実用化された時、
先ず真っ先に本作品のプロローグに述べられているような用途、
すなわち軍用、あるいは諜報戦に流用され、独占されるのがオチだと思うが、
そんな技術をアミューズメント用途に使わせてしまう、ある意味
能天気な作品を書き上げるところが、いかにも“ホーガン流”であろう。
『人間』と『テクノロジー』を常に信頼し続けたホーガンにしか描けないSF小説、
と評するのは贔屓の引き倒しかも知れない。
READING PESOGIN

## 機会があったらまた、『星を継ぐ者』を再読してみます。
## どうか安らかにお休み下さい。
## 多数の素晴らしい作品をありがとうございました。
* * *
## 作品中、マイクロ工作機械を操って、
## さらに微小な機械部品を作る作業ロボットのことを
## “マイクロ工作員”と表記していたが、
## なんだか○朝鮮のスパイを連想してしまった。
## もう少し別な訳語は無かったものか ...
## 原語ではどんな名前だったのだろう?

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