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### 24.Dec.2,011 ###


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鉄の棺
ヘルベルト・A・ヴェルナー 中央公論新社

Uボート・コマンダー - 潜水艦戦を生きぬいた男(ハヤカワ文庫NF収録)
と双璧を成す、大西洋通商破壊戦ドキュメントの傑作だと思う。
本書は当初、フジ出版社から刊行されていたのだが、
同社が倒産後、中央公論新社から再刊行された。
本書の存在はフジ出版社時代から知っていたが、
本文だけで500ページを超える大作である。
通読する機会を逸し、今頃になって読んでいる。

作者であるヘルヴェルト・A・ヴェルナーは1,941年、海軍兵学校を卒業し、
少尉候補生としてUボート(U-557)に乗り組むことになる。
数度の戦闘哨戒任務を経験後、本国の教育課程を経て
U-612の先任仕官(副艦長)を拝命。
訓練中の事故で戦闘哨戒に就くことなくU-612が沈没すると、
新造艦U-230に移され、数回の戦闘哨戒任務を経験。
中尉に昇進したヴェルナーはU-230を降ろされ、艦長予定者課程に入校。
卒業後、若干24歳の艦長としてU-415の指揮を執る事となる。
新型潜水艦探知兵器の投入や、輸送船団方式の大規模化、
あるいは護衛船団に対戦空母を編入する等、連合軍の戦術変更に因り、
数度に渡る戦闘哨戒を行うものの戦果は無く、遂には母港ブレストの港内で触雷。
U-415は全損扱いになってしまう。
直後、シュノーケル装備艦ではあるが故障がちなU-953を任されたヴェルナーは
ビスケー湾から脱出。
ちなみに彼のU-953は、ビスケー湾から脱出した最後の艦になった。
ノルウェーを経て本国のトロンヘイム基地にU-953を回航。
同基地で艦を修理し、再出撃した直後に敗戦を迎えた。

艦長就任後のヴェルナーには戦果を挙げる機会は無かったという。
これは艦長である著者の手腕が劣っていた訳ではなく、
連合軍側の巧妙な戦術に因るところが大であろう。
Uボート乗りとして哨戒任務に就きながらも敗戦まで生き残った事実、
それこそが著者の手腕の証明であろう。

著者の記憶違いか、あるいは著者のサービス精神の発露、
それとも出版社からの指示でもあったのか、本書には
公式記録とは合致しない『事実』がいくつか収められているという。
敗戦時の混乱等から、公式記録が必ずしも正確では無いかも知れないし、
どこまで本書が事実に即しているのか、判断は付けかねる。
たとえ一部が不正確であろうとも、本書は通商破壊作戦の第1級の資料であり、
第2次世界大戦の大西洋での戦いを後世に伝える
絶好の作品であることに違いは無い。
READING PESOGIN
## 本文だけで500ページを超える大作だが、翻訳が巧みなのだろう。
## 『序文』と『はしがき』以外はそれほど苦労せずに読破できた。

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