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### 24.Dec.2,011 ###


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オデッサ・ファイル
フレデリック・フォーサイス 角川書店

フレデリック・フォーサイスの第2作。
氏の処女作品である“ジャッカルの日”は出版直後に読んだのだが、
第2作である本書は手にとる機会を逸し、今ごろになって読んでいる。

“ジャッカルの日”同様、綿密な取材に基づいて得た事実に、
良く練られたフィクションを重ねて、虚と実の境目が判然としなくなる、
あのフォーサイスのスタイルは健在で、どこからがフィクションなのか不安に思える程だ。
ただ本作品は、ナチス・ドイツの暗部中の暗部である“オデッサ”
- かつての SS の構成員を当局の追及から守る為の地下秘密互助組織 -
の実態のルポルタージュに主眼が置かれているらしく、
“ジャッカルの日”に比べ、冒険小説的な成分は控えめで、
良く書けたスリラー小説を期待して読み始めると、
肩透かしを食らったような気分を味わうことになるだろう。

現実に“オデッサ”や、それに準じる機関が存在したのか否か、
私には判断できないが、仮に存在していたところで、戦後も65年が過ぎ、
かつてのSSの構成員も老齢となり、多くは他界していることだろう。
それでも過去、ナチスがヨーロッパで何を行っていたのか、
我々は忘れてはならない。
直接ではないにしろ、自分たちの祖先が犯した過ちから目を背けてはならない。
今となっては凡庸なスリラー小説かもしれないが、
欧州の過去の禍根を『ただの過去』にしない為にも、一読する価値はあろう。
READING PESOGIN
## フォーサイスは当初から“ジャッカルの日”、“オデッサ・ファイル”、
## そして“戦争の犬たち”の3作品で断筆を宣言していたのだが、
## 後に撤回。 最近の動向は ... どうなのだろう?
## ともあれ“戦争の犬たち”も未読なので、機会を見つけて読んでみたい。

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