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### 24.Dec.2,011 ###


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海の史劇
吉村 昭 新潮社
新潮文庫 よ-5-10

近代日本の青年期である『明治』という時代の息吹を活写した、
司馬遼太郎氏の名作“坂の上の雲”。
そのクライマックスである日露戦争の天王山、“日本海会戦”を、
主にロシア側の視点で描いたのが、本作品である。
フィンランド湾の奥深い所に位置するクロンスタット軍港から、ロシア
第2太平洋艦隊(バルチック艦隊)が極東に向けて出港するシーンから始まり、
帝国陸軍第3軍司令官乃木希典大将の殉死、
連合艦隊司令長官東郷平八朗大将の病死で幕を閉じる遠大で骨太なストーリーは、
夷敵に対する恐怖から、泰平の眠りを貪っていた江戸時代が終わり、
先進国に追いつき追い越せと富国強兵でしゃにむに突っ走った明治を活写し、
その軸線の行き着く先として日清・日露戦争があったとする“坂の上の雲”。
同じ日露戦争のクライマックス・シーンに材を得てはいるものの、
戦争の無意味さ、愚劣さを前面に押し出している点で、
本作品は“坂の上の雲”と趣が異なる。

“坂の上の雲”と“海の史劇”は、ひとつの事象の表裏を、
それぞれの視点から描いた作品であり、
一方が正しく、もう一方が間違っているという訳では決して無い。
いわば相互が補完しあっているような作品であり、
ある意味、一対の作品であるとさえ言えるだろう。

“坂の上の雲”を読破した方に特に強くお奨めしたい作品である。
READING PESOGIN
## バルチック艦隊を指揮した司令長官ロジェストヴェンスキー少将は
## 愚将であるとばかり思い込んでいたのだが ... 、
## 本作品を読むと、それがいかに愚かな思い込みであったか、よく判った

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