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### 24.Dec.2,011 ###


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海兵隊コルセア空戦記
零戦と戦った戦闘機隊エースの回想
グレゴリー・ボイントン 光人社

原題は“BAR BAR BLACK SHEEP”。 本書はその抄訳。
それで思い出したのだが、私は一度だけ、著者のボイントンとすれ違っているようだ。
1,983年の初夏に参加した、米国アリゾナ州フェニックスで開かれた
IPMS USA National Convention の会場に於いて、
ゲストとして招かれたボイントンがサイン会を開いていたらしい。
会場であるフェニックスのダウン・タウンのリゾートホテルで、たまたま同じ
エレベーターに乗り合わせた、いかにも『ヲタク』な目つきをした初老のおっちゃんが
『エース・パイロットの某がサイン会を開いているゼ』と教えてくれた。
当時、まだ駆け出しの飛行機マニアだった私には、おっちゃんがせっかく教えてくれた
エース・パイロットの名前に心当たりが無かった。
いや、単に英語力が乏しかっただけかも知れないが、
とにかく、そのおっちゃんが後生大事に抱いていた薄いソフト・カバーの
タイトルが“BAR BAR BLACK SHEEP”。 多分、本書の原本だろう。
サイン会場で買い求め、著者にサインを頂いたばかりなのだろうと察した。
そのおっちゃん、私が日本人だと見て、“Whisper of DETH”と訳知り顔に呟き、
私を見ながらニタリと笑った。
『ぶぁかったれ! なにが“囁く死”じゃ!
 そんなたわごと言った日本人は一人もおりゃせんぞ。
 ヴォート・コルセアなんざァ、あんなモン、只の“しこるすきー”じゃ!』
と、啖呵のひとつも切ってやろうかと思ったが、そこは敵地めりけん。
多勢に無勢では勝ち目なしとみて、黙っていた。
* * *
閑話休題。
著者は、太平洋戦争開戦直前、義勇軍飛行隊フライング・タイガースに
参加するため、中尉で海兵隊を退役し、開戦後に海兵隊に復帰。
ヴォート・コルセアを駆って南太平洋で奮戦し、28機を撃墜するも、
自らもラバウルで撃墜され、終戦まで日本本土で虜囚生活を送った。
そのいきさつをボニントン自身の筆で簡潔に綴った手記が本書である。

こうした戦記もの、とりわけ戦勝国のエース・パイロットの手記は、
自身の戦果の自慢話の集積体という先入観があったため、あまり期待せずに読み始めた。
抄訳であったためかもしれないが、本書の重心は、自身が挙げた戦果の記録にはない。
むしろ、捕虜生活の記録に重きが置かれていたのには少なからず驚いた。
逼迫する戦局、ますます悪化する食料事情。 官尊民卑の風潮著しい全体主義国家
大日本帝国で送る虜囚生活は、決して愉快なものではなかった筈だが。
国家体制には恨みこそあれ、個人的に接する機会のあった民間人や軍属を描くときの
著者のペンには、篤い親愛の情が込められている。 日本人として、それが一番嬉しい。
かつての敵国ニッポンの民草の戦時下のメンタリティが、
少しでも米国民に理解してもらえますように。
READING PESOGIN
## 今にして思えばあのとき、サイン貰っておけばよかったよなあ ...

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