惜しくも2,008年6月6日に銀河の彼方に旅立たれてしまった
『宇宙軍大元帥』野田 昌宏閣下の遺された業績に関しては、
今更私如き洟垂れSF小僧が紹介するまでもないだろう。
国内において、かのエドモンド・ハミルトンを再評価するきっかけを
創って下さったことだけでも、感謝し尽くせない想いでいっぱいになる。
その野田さん(と敢えて表記する無礼をどうかお許し頂きたい)の第1短編集
“レモン月夜の宇宙船”は、かつて早川書房から刊行されたものの現在絶版。
その幻の作品が東京創元社から、大幅に増補された上で再刊された。
収録作品は以下のとおり。
- レモン月夜の宇宙船
- ラプラスの鬼
- ステファン・ラドクリフの薔薇
- 真っ赤な雨靴
- 東京未来計画
- OH ! WHEN THE MARTIANS GO MARCHIN'IN
- 5号回線始末記
- 学術研究助成金
- 火星を見た尼僧 - クロチルドの湖
- パノラマ館 (初期エッセイ集)
本書は、早川書房版に、書籍初収録となる短編『火星を見た尼僧』と、
初期エッセイを纏めた『パノラマ館』を追加したもの。
ハヤカワ版『レモン月夜』は読み逃していたので、今回の再販は大変喜ばしい。
しかも創元社版はハヤカワ版よりも格段に厚くなり、たいへん読み応えがあった。
第2短編集『キャベツ畑でつかまえて』(- あけましておめでとう計画 - を改題)
に比べて、やや荒削りな印象は否めないが、SFあり怪談ありで、読んでいて飽きない。
あのお馴染みの『野田節』は、既にこの当時から顕在で、文章のテンポが良く、
小気味良い。 特に“レモン月夜の宇宙船”と“火星を見た尼僧”はお薦め。
また、“学術研究助成金”に登場する銀色の小人は、『キャベツ畑でつかまえて』に登場する
悪役:ガチャピン(の着ぐるみに憑依した?宇宙人)を彷彿とさせる。
未読の方(は少数派だと思うが)、是非御一読を。
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