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### 24.Dec.2,011 ###
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REVIEW 10-009 |
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本書の著者である“菅 浩江”さんには、一度だけお目にかかったことがある。
絵に描いたような京美人であった。 あれからもう10年近くが過ぎてしまったが。
さて、本書。
『小説現代』誌上で発表された短編を集めたもので、収録作品は以下の6篇。
- 純也の事例
- 麦笛西行
- ナノマシン・ソリチュード
- フード病
- 鮮やかなあの色を
- おまかせハウスの人々
いずれも現代病、あるいはある種の依存症に悩まされ、右往左往する人の姿を
女性らしい繊細な筆致で描いたもの。 描かれた世界は全て、
世界を揺るがすような大きなものでは無いが、極微な世界に起きる小波でも
恐ろしいことには違いが無い。 また、このような作品は絶対、
鈍感なアンテナしか持ち合わせぬ男どもには描けないことだろう。
どの作品もショート・ショートとしては長すぎるが、短編未満の長さであるので、
するっと気楽に読める。 そして気が付くと、ゾクっとする恐ろしさを覚えるものばかり。
特に恐ろしかったのは、嫁と小姑の仁義無き抗争を切り取った『フード病』。
また、『おまかせハウスの人々』のエンディングは衝撃的だった。
そして、YES / NO の二元論的思考に苛まれる母親役の主人公と、
AIをより人間に近づけるためのケース・スタディの為に彼女に寄り添う
ロボットの交流を描いた『純也の事例』は特にお薦め。
二元論的思考から抜け出せなくなった、ロボットのような現代人と、
ロボット的な二元論的思考方法から抜け出そうと足掻くロボットの対比が物悲しく、
そして美しかった。
西行の遺した歌に馴染みがなかった為、『麦笛西行』だけは楽しめなかったのが
残念であるが、これは自分に和歌の素養が無いためで、仕方が無い。
菅さんの作品としては水準作であるかも知れないが、読んで損は無い。
“菅 浩江”の入門作品にちょうど良い、などと評するのは失礼だろう。
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## 『博物館惑星』も『五人姉妹』も、まだ読んでいないんだよなあ ...
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REVIEW 10-009 |
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