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### 24.Dec.2,011 ###


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宇宙旅行はエレベーターで
ブラッドリー・C・エドワーズ
フィリップ・レーガン
共著 ランダムハウス講談社

『宇宙エレベーター』 ... と云われて『ピンっ!』とこなくても、
『軌道エレベーター』と云われれば、『ああ、あれね』と仰る方は多いかもしれない。
昨今では『軌道エレベーター』とは呼ばず、どうやら『宇宙エレベーター』と呼称するのが
世の趨勢であるらしい。

充分な長さを持ち、軽くて強靭な『糸』を地球の静止軌道上に用意する。
糸の一方の端を地球に向けて繰り出し、もう一方の端は180度正反対の宇宙空間へ、
バランス良く送り出す。 『糸』が地表に届いたら、何らかのアンカーに固定し、
さらに伸ばしたもう一方の端には、地球の自転によって生じる遠心力に見合った
カウンター・ウエイトを括り付ける。 かくして人類は、地表から垂直に浮かんだ、
宇宙に届く『糸』を手に入れることができる ... という寸法だ。
この『糸』さえあれば、宇宙ロケットなどという効率の悪い乗り物を使うことなく、
人員物資を『地球』という重力井戸の底から、宇宙に持ち上げる事ができるようになる。
ロケットと比べて、驚くほど安いコストで。

本書には、軌道エレベーター(とあえて表記させて頂く)によってもたらされる
薔薇色の未来が事細かに述べられている。 既存の技術を組み合わせることで、
その夢の未来は既に実現可能な段階にあり、本書の主張するところでは、
条件さえ揃えば 2,030年代にも実現可能なのだそうだ。
但し本書には、肝心の『糸』の生産技術に関する説明は無く、現時点における、
10万キロメートルにも及ぶカーボンナノチューブ製の『糸』の生産の目途に関する
情報は全く得られない。 これでは『薔薇色の未来』とやらも
『絵に描いた餅』以外のなにものでも無いと思うが、如何か。

また、たとえ技術的には充分可能であろうとも、軌道エレベーターの建設には
地政学上の問題やら国家間の利害・政治力学、利権等が複雑に絡みこむであろう事は
容易に想像がつく。 その複雑さは、スエズ / パナマ運河建設の比ではなかろう。
たとえ技術的には充分可能であろうとも、政治に足を引っ張られ、今世紀中には
軌道エレベーターの着工すら無理だと予想するが、ペシミスティック過ぎるだろうか?

本書に描かれてい『前向き』な未来図は、あまりに楽天的、楽観的過ぎると思えてならない。
一般向けの啓蒙書、とりわけ科学・技術系のそれは、かくあるべきだとも思うが ...
READING PESOGIN
## でも、一度でいいから宇宙に行ってみたいよ、ね ... ?!

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