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### 24.Dec.2,011 ###
REVIEW 10-003
流星戦記
蒼空の碧血碑、海軍攻撃第5飛行隊史話吉野 泰貴 大日本絵画
綿密な取材の結晶である本書を、一言で評するなら『労作』であろう。
カバーの表を飾る、在りし日の隊員達の姿。 飛行服に身を固め、
屈託の無い笑顔を浮かべた若人達と、彼らが背負わされた現実に思いを馳せた時、
そのコントラストの差に瞠目を禁じえない。
旧海軍の期待を一身に背負って登場し、第2次世界大戦に実戦投入された
唯一の『艦攻・艦爆統合機』として有名でありながら、
その実態は謎のままであった『流星改』。
試作、量産型併せて111機程度だろうと推測されてはいるが、
終戦直後に行われた資料焼却処分の影響もあり、
総生産機数すらはっきりしない、ミステリアスな機体である。
本書は、その『流星改』を運用した事実上唯一の実戦部隊である
『海軍攻撃第5飛行隊 - 通称 K5』が、流星改を受領してから終戦を迎えるまでを
綴った通史である。 具体的に記せば、昭和19年の暮れから、翌年の8月までとなろうか。
投入されたフィリピン航空戦で人員機材に壊滅的な損害を被り、
内地で戦力回復を図っていた『K-5』に、新鋭機『流星改』が配備される。
大戦末期の慌しい状況の下で訓練を繰り返し、熟成不足の機材にありがちな
初期トラブルに悩まされつつも、遂に初陣を迎える『K-5』。
しかし時既に遅く、作戦行動僅か4回で終戦を迎えてしまう。
その全貌を、本書は解き明かしてくれる。
豊富な取材に裏打ちされた真摯な文面は、時に暖かく、優しい。
ただの記号でしかなかった『K-5』が実は、
血の通った人間達の集団であった事を改めて伝えてくれた。
そして何より、『K-5』が辿った運命は、あの戦争の悲惨さ、
無意味さを象徴するかのようでもある。
ただ、やはり著者の経験不足が主原因であろうか、
一部の文章が未整理で、読み難く感じられた。
また、細かい誤植が目に付いたのも残念だ。
本文の冒頭、第1ページの第1行が
『昭和19年の12月中旬といえば、対米戦争開戦からは3ヶ月が過ぎ、(以下略)』
と始まるようでは、読書欲がどれほど殺がれるか、想像できるだろうか?
その他、『愛知県半田市に程近い静岡県の岡崎基地』(P.232参照)といったような、
明らかな誤謬も見受けられる。 (岡崎基地は愛知県だと思われるのだが)
折角の労作が、これでは浮かばれない。 校正は出版社の責任だと思うが、
もう少ししっかりして頂きたいものだ。
巻末の『あとがき』に記された著者の意見には、
必ずしも同意しかねるポイントがあるものの、本書は、
あの戦争を振り返る為の、良いテキストの一つであることは確かである。![]()
REVIEW 10-003
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