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### 24.Dec.2,011 ###


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永遠の終り
アイザック・アシモフ 早川書房
ハヤカワ文庫 SF269

アイザック・アシモフの遺した著作の内、私が読ませて頂いた限りで一番好きな作品は、
やはり『銀河帝国の興亡』なのだが、一番感動したのはこの作品だろう。
高校に通っていた時分、友人から借りて本書を読んだのが、つい先日のように思い出されるが、
あれから実に30余年が過ぎていることに気が付き、愕然とする。
本書を再読するのもそれ以来で、懐かしい限り。

巻末の『解説』に拠ると、本作品は、アシモフの遺した唯一の時間旅行テーマ長編作品だそうだ。
わざわざ“長編”との但し書きを入れたのは、短編に『停滞空間』があるためだ。

24世紀。 タイム・トラベルを可能たらしめる“時場”が発見され、27世紀には遂に
タイム・トラベルが実用化。 初め、タイム・トラベルは時間交易に利用されていたが、
その裏で人類は秘密組織“永遠 - エターニティ”を結成。 タイム・トラベルを利用して、
『矯正』と称する歴史操作を行うことで、人類の未来をより『好ましい』方行に指向させていた。
その結果、戦争等の厄災は事前に回避され、人類は、『永遠人』と呼ばれる一握りの
エリートによって周到に用意された安寧な歴史を、それと知らずに辿っていた。
ある時、その“永遠”に、場違いな青年がリクルートされて着任した事を発端に、
美貌のヒロイン・ノイエスと永遠人ハーランのロマンスを軸にした、
ミステリ仕立てのストーリーが、テンポ良く廻り出す。

これ以上はネタばれになりそうなので控えるが、『より良い未来』とは、誰の為の、
いかなる未来なのだろう。 安寧か、自由か、どちらかを選択せねばならない時、
人は、人類はどちらかを選ぶべきなのだろうか。 どちらが幸せなのだろうか。

ミステリ風のストーリーのおかげで、今回も楽しく読めたが、
正直言って、初めて読んだあの頃ほどの感動は覚えなかった。
親が敷いたレールをひたすら辿る事を強いられた、多感なあの頃に読んだからこそ、
あれほど感動したのだろうなあ。

晩年のアシモフには、自らが綴ってきた“宇宙叙事詩シリーズ”と“ロボット・シリーズ”を
融合させる構想があったようだ。 事実、数十年ぶりに再開された
『銀河帝国の興亡 / ファウンデーション・シリーズ』の続編に、
『鋼鉄都市』等で描かれたロボットが再登場し、人類以外の知的生命体が
銀河系に存在しない理由に、ある機関の関与を仄めかす件が描かれている。
つまり、『ファウンデーション・シリーズ』と『ロボット・シリーズ』を繋ぐ
要として、“永遠”を使おうとの伏線が貼られたものの、著者が他界されたため、
未完で終わってしまった。 『ファウンデーション・シリーズ』の続編は、
グレゴリー・ベンフォード、グレッグ・ベア、デイヴィッド・ブリンによって
『新・銀河帝国興亡史』3部作が発表されてはいるものの、こちらは未読。
アシモフは多作な作家であったが、彼の2大看板シリーズの融合作業は事実上、
道半ばにして頓挫した形になってしまった。 それが残念でならない。

最後に、あるアニメで使われた台詞を一つ、引用してこの稿を終わろうと思う。

雨の中、傘を差さずに踊る人間がいてもいい。 自由とは ... そういう事だ

本書の再読中、頭を離れなかったのが上のフレーズである。
上の台詞、形は違うが、本書のテーマに通じるものがあるように思われてならない。

READING PESOGIN

## 本書を読み進めているうち、
## かつて本書を貸してくれた友人に、
## 『お前、読むの遅いなあ ... !』
## と呆れられた事や、
## 本文中に一箇所、
## ヒロインの名前が誤植で
## 『ノイスエ』になっていた事等も思い出した。
## 何十年ぶりだろう。
## こんなつまらない事まで思い出したのは ...

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