Bookshelf TOP MENU に戻る
Bookshelf 09年 TOPPAGE に戻る

### Recent UPDATE ###
### 26.Dec.2,011 ###


REVIEW 09-016へ REVIEW 09-017 REVIEW 09-018へ

孤独の海
アリステア・マクリーン 早川書房
ハヤカワ文庫NV680

“グイン・サーガ”が4冊続いて疲れたので、少し目先を変えようと手にとった一冊。

本書は、アリステア・マクリーン作家生活30周年を記念して編まれたアンソロジーであったが、
翻訳中に著者が急逝され、日本では“追悼出版”作品となってしまったそうだ。
本書に収録されたのは以下の15篇。
  • ディリーズ号
  • 聖ジョージと竜
  • 悲劇の客船アランドラ・スター号
  • ラワルピンジ号の死闘
  • 戦艦ビスマルクの最後
  • メクネス号の沈没
  • マキナリーとカリフラワー
  • 引揚船ランカストリア号
  • マクリモンと月長石
  • 掃海艇の一日
  • シティ・オブ・ベナレス号の悲劇
  • 金時計
  • 真夜中のランデヴー
  • 不屈のジャービス・ベイ号
  • アリステア・マクリーン、成功の報酬と責任について語る
最後の1篇は、1,982年6月19日付けのグラスゴー・ヘラルド紙に掲載されたエッセイであり、
それ以外はいずれも、著者のごく初期の短篇作品であるという。
ユーモラスな小品あり、ハードな戦記物ありと、作品の性格はバラエティに富んでいるが、
どの作品も『海』が舞台であるのは共通である。
最初に収録されている“ディリーズ号”は、1,954年のグラスゴー・ヘラルド紙の懸賞に応募し、
最優秀賞を受賞した作品。 アリステア・マクリーンの処女作である。
処女長編である“女王陛下のユリシーズ号”は、この翌年の作なのだそうだ。

“ディリーズ号”は、人命救助作業のシビアな様子を描いた小品。
“聖ジョージと竜”は、ある意味アリステア・マクリーンらしからぬラヴ・コメ。
“マクリモンと月長石”はユーモラスな小品。 
同じ系統の“金時計”は、やや御都合主義だが、オチが楽しい。
“掃海艇の一日”は、倦まず弛まず繰り返される機雷処理作業の一日を切り取った佳作。
“マキナリーとカリフラワー”は、いかにもアリステア・マクリーンらしい冒険譚。
特に“真夜中のランデヴー”は、短篇にしておくにはもったいないような、
緊張感溢れる戦時冒険譚である。 この一作だけでも、ぜひ御一読を。
その他の作品の多くは、戦時に起きた事件や海戦に材を採った戦記物。
欧州においては有名な事件、事故かも知れないが、そちらに関する知識に乏しいので、
いまひとつピンとこなかったのが残念だが、押さえた筆致で描かれた大西洋の描写が圧巻。

小品であるが故に、かえってアリステア・マクリーンのエッセンスが
色濃く滲み出しているような作品ぞろいであった。
文庫版が出版されてから17年(!)が経過しているので、今更入手は困難だと思うが、
貴方が冒険小説の、あるいはアリステア・マクリーンのファンなら、
手放しでお薦めの逸品であります。
READING PESOGIN
## 枕もとに積みっぱなしにして17年。 やっと読破致しました。

REVIEW 09-016へ REVIEW 09-017 REVIEW 09-018へ

Bookshelf 09年 TOPPAGE に戻る
Bookshelf TOP MENU に戻る