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### 26.Dec.2,011 ###


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アンブロークン アロー
神林 長平 早川書房

*** 戦闘妖精・雪風 第3部 ***
待望のシリーズ最新刊であったにもかかわらず、読破まで少々てこずった。
ストーリーが難解だったから、ではない。
途中、落雷に驚いて行方不明になったウチの飼い犬が一晩、近所の警察署に留置されたり、
お向かいの自動車がウチに飛び込んできた挙句、ドライバーに文句を言われたり
 (まずは詫びるのが本筋でしょ?!)、小学校入学以来の友人が急逝し、
その葬儀などでバタバタした事もあるが、実は“戦闘妖精・雪風”第2部
『グッドラック』の粗筋の大半を忘れていたからだ。
正直『ロンバート大佐って、誰 ... ?』状態。
F.A.F.クーデター事件の首謀者の名前すら忘れていた。 情けない。

“戦闘妖精・雪風” 第3部『アンブロークン アロー』は、
第2部『グッドラック』のエンディング直後の時点から始まる。
第1部の発表当時、『フライト・マニュアルSF』と熱狂的に称賛された
“雪風”シリーズの続編となると、どうしても派手な空戦描写を期待してしまうが、
その点では本書は期待外れである。
だが、『虚像』と『実像』が交錯し、時間や因果律が捩れた世界の描写や、
『自分』と『自分自身』、あるいは『自分』が『他者』や『リアル世界』と
コミュニケートするためのツールである『言葉』、『言語』を軸に、
多数の作品を紡ぎ続けてきた著者らしさを充分に堪能できる作品であった。
まさに“長平節炸裂!”といった作品である。

ただ、美しい余韻を響かせるエンディングは、同時に唐突でもある。
物語は収束を拒絶し、さらに拡散し続けたままだからだ。
第3部がエンディングを迎えてもまだ、『地球人類』、
いや『F.A.F.』対『異星体ジャム』の戦争が終結したわけではない。
宣戦布告こそ為されたのかも知れないが、『地球人類』は『ジャム』との
コンタクトを成立させたわけではないのだ。

派手なスカイ・アクション描写に未練は無い、といえばウソになるが、
“戦闘妖精・雪風”はもはや、『フライト・マニュアルSF』などという
小さな枠に収まるような作品では無くなってしまった。
『地球製戦闘メカトロニクス』を介して『地球人類』と『異星体ジャム』が
拳と拳でコミュニケートする、ファースト・コンタクト・テーマに変貌、
いや、あるべきルートに軌道を修正しようとしているかのようだ。
そうだ。 “戦闘妖精・雪風”シリーズは、『地球人』と『異星人』が
異星の空で繰り広げる空戦記 ... などという薄っぺらい小説ではなく、
『地球人類』と『異星体』とのファースト・コンタクトを描いた作品だったのだ。

地球は、惑星フェアリーは、そしてF.A.F.と地球人類の運命はどうなるのだろう。
気の早い話で恐縮だが、近い将来、第4部を拝読させて頂きたいものだと、
心から願う。
*** 追記 ***
『雪風』に代表される『地球製戦闘メカトロニクス』は、
“敵は海賊”シリーズに登場する海賊課の対コンピューター・フリーゲート
『ラジェンドラ』に代表される機械知性体の御祖先様。
そして、首尾よくジャム人間と化した『ロンバート大佐』こそ、
『宇宙海賊王ツザキ・ヨウメイ』その人のようにも読めるのだが、さて ... ?
READING PESOGIN

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