“ボルボロスの追跡(# 106)”の直接の続編に相当する、グイン様御一行漫遊記。
ボルボロス砦から進発したゴーラ軍の追撃をかわさんと、クムとの国境を目指す一行。
時ならぬ嵐に遭い、前方偵察のために先行したリギアとはぐれた一行の前に、
いわくありげな古城が現れる。 名をコングラス城という。
カムイ湖畔の岸の上に聳えるその城を預かるのは、ドルリアン・カーディシュ伯爵。
ドルリアン伯爵に誘われるがまま、一夜の宿を請う一行。
その夜、グインが古城で見たものは ...
おお、これぞまさしく正統派ゴシック・ホラー!
ヒロイック・ファンタジーの王道を行く一編かと喜んだのだが ,,,
巻末の著者“あとがき”に明記されていることだが、この一編は、
著者御自身が若い頃に著したある作品へのオマージュだそうだ。
読者の小賢しい先読みを裏切り、別の地平に読者を放り出す
著者の力量には感服する他ない。
ドルリアン伯爵が、グインに自身の正体を告げるシーンや、
グイン一行との別れのくだりなど、しっとりとした情感が漂い、
忘れられない一編であった。
ドルリアン伯爵にいつか、魂の平安が訪れるよう祈るばかりである。
また、作中、グインの正体の一端が明かされるなど、
サーガ全体のなかでも疎かにはできない一編でもある。
中原に生きるグインと、永遠の孤独を抱いて生きてゆくドルリアン・カーディシュが、
いつか再会を果たすストーリーを読んでみたかったものだ。
ハインラインの“メトセラの子ら”が妙に読みたくなってしまった一編であった。
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