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### 22.Jun.2,012 ###


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涼宮ハルヒの退屈
谷川 流 角川書店
角川スニーカー文庫

読了するのに半年を費やした“アーヴァタール”の口直しにと選んだのが、本書。
すっかり本を読むのが億劫になっていたので、『口直し』と言うよりは
『リハビリ』のほうが近いのかも知れない。

本書は“涼宮ハルヒ”シリーズの第3巻。
時系列で並べると、第1巻“憂鬱”と第2巻“溜息”の中間、
初夏から盛夏の頃を舞台にした短編集といった趣の一冊。
短い“プロローグ”に続き、SOS団が草野球大会に参戦する “涼宮ハルヒの退屈”
ハルヒが中学生の頃のエピソードを紹介する “笹の葉ラプソディ”
ハルヒの超常能力の後始末に振り回されるSOS団の奮闘記 “ミステリックサイン”
ハルヒが素人探偵役を果たす “孤島症候群” の4篇を収録。

未来人、宇宙人(製の有機アンドロイド)、超能力者、そして神(?)が集う
SOS団のうち、唯一の普通人にして本名すら詳らかではない高校生
 ー 現実から一歩踏み外した“ハルヒ・ワールド”の案内人にして、
   作中世界における読者の分身であることは言うまでも無い ー
の視点で語られるスタイルは変わらない。

収録された4編のうち、宇宙人・長門有希がキーとなるエピソード
“笹の葉ラプソディ”“ミステリックサイン”が秀逸であった。
人類でありながら人類とは明らかに違う存在、
情報思念体製の有機アンドロイドである長門有希が内包する
孤独感と時折見せる人間らしさが、私の琴線に触れたようだ。

常に無表情な素顔の下に隠されていたものが顕在化したのか、
あるいは存在する筈の無かったものが、
地球人類(= SOS団)と付き合ううちに芽生えたのだろう。
人類以外の存在が、人類と触れ合ううちに人間らしさを獲得する。
単調なモノクロームの世界が、鮮やかな色の付いた世界に変貌するように。
どうやら私は、このような仕掛けに弱いらしい。

今なおカルト的な人気を誇る映画『ブレード・ランナー』で、
人間のコピーであるレプリカントのメーカー“タイレル社”の、
社長の姪の記憶を受け継ぐレプリカント・レイチェルが、
一瞬にしてレプリカントから大人の女性に変貌を遂げる名シーン
− レプリカントの天敵であるブレードランナー・デッカードの部屋のピアノの前で、
高く結い上げたスクエアな髪を解く『あの』シーンを思い出した。

この“涼宮ハルヒ”シリーズは、既に8巻程が刊行済みだと思う。
続巻の“涼宮ハルヒの消失”もきっと読むだろう。
READING PESOGIN

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