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### 27.Dec.2,011 ###


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戦う操縦士
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ 新潮社
新潮文庫

### 新潮文庫 復刊/第5回配本対象作品 ###
パイロットであり作家でもあったフランス人、サン=テグジュペリの作品。

第2次世界大戦初期、欧州一の強国と自他共に認めるフランスは、
ナチス・ドイツに蹂躙されていた。 ファシストの侵略から祖国を救うため、
一陸軍大尉として偵察機を飛ばした体験を基に描かれた作品。
ナチス・ドイツの攻撃は容赦無く、フランス軍は後退につぐ後退を余儀なくされている。
それはサン=テグジュペリの所属していた司令部附偵察大飛行部隊
所属2の33飛行隊も例外では無かったばかりか、彼らの司令部も移動を繰り返し、
その所在すら誰も知らないありさまであった。

空も地面もドイツ軍で溢れていた。 フランスは混乱の極みにあり、
組織的な抵抗はもはや不可能だった。 それでも偵察命令は下令される。
一度偵察行に指名されれば、敵陣深く行かねばならぬ。
勿論、生還の保証は無い。 しかも、仮に生還できたところで、
持ち帰った情報を分析/評価し、生かすべき軍組織は既に瓦解しているのだ。
それでも彼らは飛ぶ。 義務だから。

そんな一偵察行に飛び立ったサン=テグジュペリの目を通して、
時にシニカルに、時に哀切な調子で滅びゆくフランスの様子を描いた作品である。
奇跡的に生還を果たした彼は、この敗戦の意味と意義を見出し、
明日に繋げようとするのだった。

文庫本で200ページに満たない小編でありながら、
読了するのに3週間強かかってしまった。
徹頭徹尾一人称で語られる文体も少々辛かった。
翻訳者である堀口大學氏の格調高い名訳を否定するものではないが、
本作品が紹介されたのが昭和31年のことだそうだ。
以来、版を重ねること32回。
そろそろ新訳を御願いしたいところだ。


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