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### 27.Dec.2,011 ###


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ファイアフォックス
クレイグ・トーマス 早川書房
早川文庫NV

今更、である。

本書が発表されたのが1,977年。 ソ連がまだ元気で、
ラム-Kやらラム-Lなんぞは未だ視野の外。
日本の防空識別圏をすり抜けたMig-25が堂々と函館に着陸し、
パイロットが亡命を求めて大騒ぎになった記憶が鮮やかな頃である。
本作は、その“ベレンコ”事件にインスパイアされて
著されたであろう事は容易に想像される。 発表後には映画化もされ、
TVでも幾度となく放映されているので、一度は御覧になった事だろう。
そう、クリント・イーストウッドが主役を演じた『あの』映画の原作なのだ。
本書を入手したのはたぶん、早川書房の“復刊フェア”かなにかで
市場に再登場した時だったろう。 暇つぶしにちょうど良いと購入したものの、
映画でお馴染みのストーリーを追うのもおっくうになり、
そのまま仕舞いこんでいたらしい。 年末の大掃除で再発見してしまい、
今頃読んでいるわけだ。

本書の発表後、ベルリンの壁が崩壊するは、ソ連が消滅するはで、
世界はその様相を大きく変えてしまった。 アメリカに比肩できる
超大国が消滅してしまって、本書のような軍事スリラーは
“敵役”を探すのに四苦八苦。 “適当”な敵役が見出せなくなった
近年の軍事スリラー作品は、スケールが小粒になってしまった感は否めない。 
敵がイラクや北朝鮮では、ねえ ... 。 いっそのこと、アメリカを敵役にした
近未来スリラーなぞ書いてみたら良いかも。

 ## それじゃあタダの“架空戦記”だよ ... (>_<)。

本書の時代設定は今や骨董品の範疇だし、主人公が盗み出す
Mig-31 ファイアフォックスの設定は噴飯ものだが、
昨今の世界情勢では想像もできない類の、
スリラーの題材にとっては『古き良き時代』の作品ではある。
(御都合主義的な展開には目を瞑ろう)
演出上しかたが無い事ではあるが、緊張感とスピード感に溢れた
Mig-31 奪取後を描いた後半部に対し、前半の、
ソ連への潜入工作のくだりは少々冗長に感じられた。

まあ、かつて世界を覆っていた、あの重苦しい時代に
想いを馳せながら読むのも悪くは無いだろう。
続編の“ファイアフォックス・ダウン”も読んでみたいが、
こちらは買い逃した。 今更入手は困難だろうなあ。


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