Bookshelf TOP MENU に戻る
Bookshelf 07年 TOPPAGE に戻る

### Recent UPDATED ###
### 27.Dec.2,011 ###


REVIEW 07-023 へ REVIEW 07-024 REVIEW 07-025 へ

異端の空
太平洋戦争 日本軍用機秘録
渡辺 洋二 文藝春秋
文春文庫

記者として『航空ジャーナル』誌等で御活躍だった渡辺 洋二氏の著作は、
どれも読み応えがある。
どの作品も緻密な取材に裏打ちされていて、他の追随を許さない。
本書には、以下の7篇が収録されている。
いずれも航空雑誌等で発表済みの記事に加筆、修正を加えたものだが、
どれも読者の期待を裏切らない秀作揃いであった。
ドイツ空軍のロケット要撃機 Me163 のコピー機『秋水』開発の顛末 “秋水一閃”
初陣を迎えた零戦の奮戦を描いた  “無敵伝説へのプロローグ”
帝国陸軍のドイツ製初等練習機を通して見た大戦末期の混乱を描いた “ユングマンの満州”
複葉ゲタ履きの零式観測機の奮闘振りを紹介する “過負担空域に苦闘す”
帝国海軍最大の威容を誇る2式大艇の苦難譚 “大艇、多難のとき”
戦時下に製作された速度研究機の開発物語 “最高速レシプロ機「研三」”
大戦末期に開きかけた仇花を活写した “前翼型戦闘機「震電」”
いずれのエピソードも興味深かったが、特に『震電』のエピソードは、
航空ジャーナル誌の別冊(『大空への挑戦』、だったか?)で
拝読した記事の加筆・修正版であり、数十年ぶりに再読できて嬉しかった。
また『研三』のエピソードも興味深い。 
お恥ずかしい話だが、『研三』の名前は知っていても、
具体的な事は殆ど知らなかったものだから。
FAI の規定を満たしていないので非公認ではあるが、
速度 699.9Km/h / 高度 3,527m は立派な記録と言えるだろう。
舞台が各務原というのも、岐阜の人間には嬉しいポイントであった。
つい60年程昔、いま頭上に拡がるこの空を
『研三』が懸命に駆けていたのだと想うと、なにやら頬が緩むのだ。

暫く前に購入したまま積読状態で放置していたのだが、
もっと早くに読めば良かったと後悔させられた力作であった。


REVIEW 07-023 へ REVIEW 07-024 REVIEW 07-025 へ

Bookshelf 07年 TOPPAGE に戻る
Bookshelf TOP MENU に戻る