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### 27.Dec.2,011 ###


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シックス・ボルト III
神野 オキナ メディアワークス
電撃文庫

超常能力者『聖痕者』の登場する“ガンパレード・マーチ”といった趣の、
“シックス・ボルト”シリーズ第3巻。

物語は、日本初の『聖痕者』と、異星人『権利者』により
“ブルー・ブラッド”として強制再生されたヒロイン
“もうひとりの氷香”の逃避行の顛末から始まる。

地下限定戦争の戦死者の遺体を基に、異星人『権利者』によって造られた
地球人のクローンが“ブルー・ブラッド”である。 地上では既に、
地球陣営が再生させた戦死者のクローン体(俗称“来世”)が生活していることから、
『権利者』側から脱走した“ブルー・ブラッド”達は行き場所が無い。
地球人のクローン体でありながら、地球人に狩られる立場の
“ブルー・ブラッド”達は、自らの生存のために脱出を開始した ...
というのが前巻のストーリー。

脱出、と云うが、では地上に彼らが安全に暮らせる場所があるのか?
一番簡単なのは、“ブルー・ブラッド”がこっそり“来世”と入れ替わることだろうが、
それに関する記述は無かった。 あるいは次巻への伏線か?

たとえ『管理者』の監視の下とはいえ、地下限定戦争は『権利者』による
ハンディキャップ戦であるし(本戦前の予備戦、練習という設定ではあるが)、
その結果として地球陣営に出現した『聖痕者』は、『権利者』にとって
脅威であるはずなのに、『権利者』は何の手も打とうとはしていない。
そればかりか、脱走した“ブルー・ブラッド”の処理を地球側に依頼してくるていたらく。
これが伏線だとしたら、行き着くところは“人類の進化の促進”であり、
地下戦争は“進化”を促すための手段で、只の茶番であった、といったところか。

大体、人体のクローン培養が可能なら、『聖痕者』のクローン体を量産し、
適当にでっち上げた記憶をインストールして戦闘に参加させれば良い。
(この場合、『管理者』による何らかの罰則規定が定められてはいるだろうし ...
 これも伏線? 『聖痕者』専用のパワード・スーツが起動できなくなったのも、
 これに関係があるのだろう)

さらに話を進めれば、クローンを造れるほど遺伝子工学が進んでいるのなら、
人類の遺伝子と『権利者』の戦闘体の遺伝子を数値化、
データ化して計算機に入力。 演算素子内で戦闘を行わせれば済むではないのか? 
クローン体に記憶の再インストールが可能(という設定)なら、
それくらいの芸当は充分可能だと思うが。
それにしても、記憶と心は似て非なるものだと思う。
その点を著者はどう考えているのだろう?

つっこみどころは一杯あるが、第3巻まで付き合ったら、妙な愛着が湧いてきた。
明言は無いものの、おそらく続刊も出てくるだろう。
おそらくは『聖痕者』と『聖痕者』の非合法クローン体との激突、
そして『聖痕者』と“もうひとりの氷香”の再会等が軸となるだろう。
なんとなく先が読めてしまったような気もするものの、続巻も読んでみるつもりだ。
良い意味で読者を裏切るのが作家の『力量』というものである。
小賢しい読者の先読みをどう裏切って下さるか楽しみだ。

校正の時間が不足していたのか、本書は誤字脱字が目立ったことを
最後に書き添えておく。 著者はショボい FEP(とは最近は言わないか ...)を
お使いなのだろうか?


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