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### 27.Dec.2,011 ###


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ルナティカン
神林 長平 早川書房
ハヤカワJA文庫

1,988年05月に光文社文庫から発表された、書き下ろし作品。
“蒼いくちづけ”らと同様、比較的短期で絶版となったように思う。
発表当初に1度読んだが、早川書房からの再刊を機に、
こちらも再読してみることにした。
どういうわけか、あまり印象に残らなかった作品だったようで、
“蒼いくちづけ”と同様、月面が舞台だったこと以外、記憶していない。
新作を読むような気持ちで読めたのは喜ぶべきなのか、
記憶力の減退を嘆くべきなのか ... 。

舞台は“蒼いくちづけ”同様、月面都市。
時制も恐らく大差はなさそうだが、それ以上の関係は無い。

公式には認められていないが、煌びやかな月面都市の地下には
旧都市群の成れの果てが拡がり、月面都市の住民からも蔑みを込めて、
『ルナティカン』と呼ばれる集団がひっそりと暮らしていた。
地下都市群は月入植初期に造られたもので、月面都市が主流となったこの時期、
空気生産換気システムとして再利用されている。
そこを生活の場とする『ルナティカン』は、システムに寄生する『蛮人』と見なされ、
地表世界では法的保護さえ受けられない。 月のアンドロイド製造会社“LAP”は、
そんな『ルナティカン』の赤ん坊を見かけ上は合法的に入手し、
自社製アンドロイドに養育させていた。
両親の代わりを務められるアンドロイドの開発、改良の実験台として。
“LAP”の非人道的な実験に憤りを覚えた地球のノン・フィクション作家(の卵)、
リビー・ホワイトは“LAP”を告発せんと取材活動を開始。
いきなり正面から月の“LAP”に乗り込むが、 けんもほろろにあしらわれたばかりか、
逆に『好ましからざる人物』として“LAP”にマークされてしまう。

“LAP”と契約を結び、ポールと名付けられた実験対象の警護を生業とする
自由探偵リック・ライルは『ルナティカン』の出である。
リビーは『ルナティカン』の世界を捨てたリックと出合い、
彼の本来の目的に協力する... 。

本書の解説に的確に述べられていることだが、確かに神林 長平の作品は
『自らが属すべき世界を模索し、そこに還ろうとする』、
あるいは『原点への回帰』をモチーフにする事が多い。
本作はポールが、本来属すべきである『ルナティカン』の世界に帰還する
ストーリーかと思いきや、タイトルが暗示しているとおりの物語であった。
(ネタバレになるので詳述は避ける)

作品自体は面白くないわけではないが、正直言って物足りなさを感じた。
おそらく光文社の編集部の意向であろう、ストーリーがあまりにストレート過ぎて、
『いつもの』神林的なフレーバーが希薄であるためだ。
先に『印象に残らなかった作品』と述べたが、
『いつもの神林作品』と毛色の違う作品であったためだろう。


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