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### 27.Dec.2,011 ###


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シックス・ボルト II
神野 オキナ メディアワークス
電撃文庫

一昨年の末に出版された“シックス・ボルト”の続刊。

第1巻の刊行から約2年、続編が出たというので、○喰わばなんとやら
... で読み始めたのが本書である。
まず、物語の世界観を軽く述べておく。
2,015年、地球は突然、異星人『権利者』から宣戦を一方的に布告され、
審判役の第三者である『管理者』の監視のもと、
異星人のルールに則った戦争を強要される事となった。
負ければ地球は『権利者』の植民星としてのみ存続を許される。 つまり滅亡である。
地球側の戦士として選定されたのは、17歳の少年少女達。
その中から選抜された者が、異星人の用意した兵器“強化装甲服”をまとい、
地下で行われる限定戦争に参加するのだ。
かくして地球の命運は、選抜された17歳の少年達に託された ... 。
以上が基本プロットである。

主人公は、優しいが気弱な少年。
ヒロインはプラチナ・ブロンドの美少女、通称 “アイス・ドール”。
(一度戦死し、クローンとして蘇る)
選ばれし戦士が戦場で駆るのが人型兵器 ... とくれば、思い出すのが
『新世紀 エヴァンゲリオン』であるが、『シックス・ボルト』第1巻の読後感は、
まさに『エヴァ』の焼き直し、といったものであった。

前作が『エヴァ』の焼き直しなら、本書の前半は『仮面ライダー』の焼き直し、
といった風情の作品であった。

前作で描かれた戦争は、終わったわけでは無い。
地下限定戦争の戦死者の体はクローン培養され、
培養の為の血液サンプルを採取されるまでの記憶とともに返される。
血液採取は戦闘訓練の初期に行われるので、クローン体には戦死時の記憶は勿論、
戦場で体験した記憶は一切残らない。 それが異星人の定めた『ルール』である。
つまり、形式の上では、地球人に戦死者は出ないことになる。
ところが『権利者』も、地球人戦士の遺体を基にクローンを培養し、
対地球限定戦争の戦術を練るためのシミュレーションの『駒』として
活用していたのだ。

前巻で戦死し、『権利者』の兵器として遺体を利用された後、
ヒロインである氷香はクローン再生され、戦場での記憶が欠落してはいるものの、
赤い血を持った人間として、元の生活を続けている。
その地上に、シミュレーションの『駒』としてクローン再生された、もう一人の
氷香が現れた。 異星人のシミュレーション戦場から逃げ延びてきたのだ。
“シミュレーションの『駒』”達の肉体には蒼い血が流れていることから、
地上に逃げてきた彼らは“ブルー・ブラッド”と蔑みを込めて呼ばれ、
同胞であるはずの地球人からも狩られる存在に堕していた。
オリジナルの地球人からはもちろん、赤い血を持つクローン再生人からも、
“ブルー・ブラッド”は幽霊にしか見えないのだから。
ドッペルゲンガーとなった“もうひとりの氷香”の運命は ... ?

仮面ライダー1号の攻略法を模索するために製作されたのが、
仮面ライダー2号達である。 彼ら、ライダー1号のコピーたちは、
ショッカーの怪人達に嬲り殺しにされる運命だったが、その内の1人が脱走。
ライダー2号として活躍する ... というお馴染みのプロットを、
本書の前半を読んでいて、ふと思い出してしまった。

後半は予想どおり、(いや、お約束どおり、か?)、
道ならぬ愛の逃避行が待っていた。 やっと面白くなってきた。
さあこれからだ、というところで紙面が尽き、次巻に続いてしまった。
第1巻に比べ、著者独自の世界が拡がりだしたようではある。
近々、第3巻も刊行予定ではあるらしい。

いくら異星のテクノロジーとはいえ、
血液から身体全体のクローンニングが可能との設定は許すにしても、

 (訂正 : 身体は12歳の頃に採取された腹膜細胞から培養される設定)
 (追補 : 血液中に投与されたナノマシンを採取し、
       それからクローン体に記憶をコピーする、とはいえ ...)

培養体が記憶まで受け継ぐのはいかにも御都合主義だ。
その他つっこみどころはあるにせよ、シリーズ物を途中で投げ出すのも嫌なので、
いつかそちらも読んでみるつもりではいる。


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