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### 27.Dec.2,011 ###


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ティーターン
ジョン・ヴァーリィ 東京創元社
創元SF文庫

ジョン・ヴァーリィの著書を読むのは初めてだが、
いや、初めてだからこそ、だろうか、とても評価が難しい。

(訂正 : ジョン・ヴァーリィ著の『ブルー・シャンペン』を4,5年前に読了していました)
(追補 : 『ブルー・シャンペン』はとても面白かった。 お勧めです)

NASA 所属の深宇宙探査船『リングマスター号』は7人の乗員を乗せ、
土星への壮途に就いた。 その途上、『リングマスター号』は
土星の新衛星を発見。 『テミス(後にガイアと改称)』と命名された新衛星は、
直径 1,300Km、厚みが 250Km のドーナッツ状の円環体と判明。
観測結果から、『テミス』は天然の衛星では無く、異星の恒星間宇宙船と推測された。
土星の衛星探査という単調な任務から一転、ファースト・コンタクトの重責を
担うことになった『リングマスター号』は、アプローチを開始すべく、
『テミス』の上空、400Km の周回軌道に乗った。 その時、『テミス』から
伸びてきた無数の触手状の物体が『リングマスター号』を絡め取った。
抗う手段も無く『リングマスター号』は圧壊。 そして気がついてみると、
乗員達は『テミス』の内部に居たのだった。
身に付けていた宇宙服は金属部品以外全て溶け、全裸・無毛のありさまで。
彼らが『テミス』の内部で見たみたものは ...

深宇宙探査船『リングマスター号』は、
映画『2,001年宇宙の旅』の『ディスカバリー号』を彷彿とさせる。
それどころか、作中『ディスカバリー号』との相似をほのめかす表現さえあるのだ。
目的地が共に土星であることも意図的であろうか。
『ディスカバリー号』の目的地は、映画では木星だったが、
“輪の有る天体こそが旅の終わりに相応しい”とかで、
ノヴェライズ版では土星に変更された。
当時、木星の輪は未発見であった。 以上、余談。

『テミス』内部の描写は、まるでニーブン & パーネルの『リング・ワールド』だし
 (円環状世界の内側の描写が似てしまうのは理解できるが)、
リングマスター号乗員の覚醒の様子は、どことはなしに
フィリップ・ホセ・ファーマーの『リバー・ワールド・シリーズ』を思い出させる。
これではまるで、有名な作品のアイディアを繋ぎ合わせた、
パッチワークではないか ... ? ただのパクリか? それともオマージュ?
どう理解したら良いのやら、序盤は悩みながら読み進めることとなった。
余計な事を考え過ぎたおかげで、序盤を読み終えるのに随分
時間がかかってしまったが、中盤にさしかかる頃には著者(さらには訳文)の
巧みさに乗せられて、すらすらと読み終えることができた。
先に挙げた作品のほかに、ハインラインの『宇宙の孤児』や、
ガイアの動植物相の豊かさ、異形さはまるで
ブライアン・W・オールディーズの『地球の長い午後』、
あるいは山田 正紀の『宝石泥棒』等も思い出されたが、
それらの有名な作品のエッセンスが上手く組み合わされた上で
著者独特の世界が構築されていて、とても楽しい時間を過ごすことができた。
ジョン・ヴァーリィはストーリーテリングの名手だと聞くが、
その名声に恥じぬ作品であった。

続編である “Wizard” も1,980年に発表済みで、
東京創元社から『ウィザード』上下2巻として翻訳・刊行済みである。
そちらも是非、読んでみたいものだ。


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