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### 27.Dec.2,011 ###


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戦略拠点 32098 楽園
長谷 敏司 角川スニーカー文庫

### 第6回スニーカー大賞(2,001年02月発表)金賞受賞作品 ###
『蒼いくちづけ』を読了したものの、次に読むものが決まらない。
同じ著者の『ルナティカン』にしようか、舞台が同じ月面だし
...と思うのだが、どうにも食指が動かない。
こんな時はリハビリに軽いものを ... ということで、
積み上げた本の柱から引き抜いたのが本作品である。

人類連合と汎銀河同盟の間の争いは、1,000年に及ぶ星間戦争に発展した。
その戦線の片隅に、絶対防衛線で守られている人類連合側の惑星があった。
不可侵の惑星は、地下資源が豊富なわけでもなく、航宙や通信の要衝でもない。
強力な軍事基地や修理/補給処が整備されている様子もない。
そればかりか、地表には植物以外の生命の痕跡すら観測されていない。
不可侵惑星は、ただ青く、美しいだけの小さな惑星なのだ。
人類連合は、周辺宙域で沈められた友軍の宇宙船を曳航し、
その惑星の表面に降ろすのみ。
しかし、修理を行っている様子は無い。
地表には、無数の宇宙船の残骸が、まるで墓標のように
突き刺さっているばかりであった。
不可侵である以上、相応の理由があるはず。
汎銀河同盟軍は、この惑星の調査が必要との結論に達し、
戦略拠点 32098 の名を与えた。
数限りないアタックの末、汎銀河同盟軍は R777 特別降下チームを編成。
力任せ、運頼みの降下作戦の結果、ただ一人が降下に成功。
戦略拠点 32098 の地表で彼が見たものは ...

あまりに牧歌的な前半と、リリカルな後半。

不可侵惑星を一周しながら高度を上げる宇宙船と、
それを追いかけて、どこまでも広がる草原を駈ける少女。
宇宙船が残した衝撃波の名残だろうか。 永遠の別れを惜しむかのように、
優しい風が、走り疲れた少女の背中をそっと押す ...
そんなシーンを味わえただけでも、読んだ価値はあった。

作風はまだまだ荒削りだったものの、充分楽しめる作品であった。
楽園は、その名のとおりの楽園だったのか、どうか御自身で確かめて頂きたい。


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