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### 27.Dec.2,011 ###


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スター・キング
エドモンド・ハミルトン 東京創元社
創元SF文庫

### 2,001年創元SF文庫・復刊フェア対象作品 ###
『キャプテン・フューチャー』シリーズや『スターウルフ』シリーズ、
『太陽強奪』、『フェッセンデンの宇宙』
  (高橋 留美子のマンガ “うる星やつら” に登場するガジェット
   “コスモ・ボックス” の元ネタ?)
等で有名なエドモンド “ワールド・デストロイヤー” ハミルトンの作品。
大昔(小学生の頃か?)、ジュブナイルSF全集版で読んだ気がするが、
全訳を読むのは初めてだと思う。 ちなみに、本作品が発表されたのは、
第二次世界大戦終結直後の1,947年のことらしい。

20世紀の平凡な会社員と2,000世紀の科学者が、
肉体はそのままに、精神のみを入れ替えた直後、
銀河を揺るがす大陰謀が露見し、20世紀の地球の平凡な会社員、
ジョン・ゴードンは否応なくその渦中に巻き込まれて行くという、
お馴染みのストーリー。 この設定はある意味、
願望充足型の物語とも読み取れる。 長く苦しい戦争がやっと終わり、
平和な時代が訪れたばかりの時期に発表された小説のはずで、
少々奇異に感じるが、いまだ戦争の余燼が収まったは言えない
時期だったからこそ、SF小説ファンの間にも英雄願望のような
風潮があったのかもしれない。 人間とは難儀なものである。

ストーリーのキーとなるのが、“宇宙戦艦ヤマト”の“波動砲”等の
イメージ・ソースになったであろう、銀河を真っ二つに引き裂きかねない
古の超兵器“ディスラプター”である。 この“ディスラプター”を
格納場所から回収する件が少々冗長で、だれた。
それ以前に、ジョン・ゴードンと肉体を交換した、未来の科学者の
危機意識の無さかげん、危機管理の『き』の字も無い無責任ぶりに
呆れたり、腹が立ったり。 でも、この無責任ぶりが無かったら、
そもそもストーリーが成立しないのだから、仕方が無いのは判るが ...
ともあれ、久しぶりに、古き善き空想科学冒険小説を堪能させて頂きました。

これは余談だが、ハミルトン氏の御夫人は、同じSF作家にして
映画の脚本家としても高名な“リイ・ブラケット”女史。
残念なことに、彼女のSF作品は、日本にはあまり紹介されていないようで、
せいぜい『地球生まれの銀河人』くらいしか思い浮かばない。
その一方、脚本家として関わった映画はかなりあるようで、
それとは知らずに御覧になっている作品もあることだろう。
ファンキーなメロディーの『小象の行進』で有名な『ハタリ!』の
脚本も彼女の作品だそうである。
彼女の遺作となった“STAR WARS Episode - V ;THE EMPIRE STRIKES BACK”は、
一度は御覧になったことだろう。 正確には、第1稿脱稿直後に
癌で亡くなられたそうで(扶桑社刊 『ルーカス帝国の興亡』 P.290 参照)、
遺稿を基に、別の脚本家によって決定稿が完成された。
“STAR WARS Episode - V”のエンド・ロールに、二人の脚本家の名前が
クレジットされているのはそのためである。
“THE EMPIRE STRIKES BACK”はシリーズ中、スペースオペラ・テイストが
一番濃かったように思う。 脚本がしっかりしていたからだろう。
あるいはスペースオペラ作家の“血”のなせる業か?

エドモンド・ハミルトン氏ご自身は、“STAR WARS Episode - IV”の
米国公開直前に亡くなられたそうだ。 御自身が書き綴ってこられた
スペース・オペラの世界を映像化した最高峰の作品を、
さぞや御覧になりたかったことだろう。 合掌。


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