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### 03.Dec.2,011 ###


モノグラム 1/72 F-14 トムキャット の思い出

さて、以前、モノグラム 1/48 Do335 にまつわる思い出を
御紹介致しました。 本稿はその後日譚になるかと思います。

1,960年から80年代初期までの『航空ファン』誌には、
読者が投稿した模型の写真を紹介するコーナーがあり、
そこで幾度となく“モノグラム”の文字を目にしていましたので、
ブランド名としての“モノグラム”には馴染みがあったものの、
“モノグラム”製品の実物を見たのは、当時の
大阪国際空港(現伊丹空港)の送迎デッキ出入り口に
設置されていたショーケースに収められた 1/48 Do335 が
初めてであった事は、前稿で述べたとおりです。 つまり前稿は、
私のモノグラム原体験を御紹介したものでもあったのです。

では、初体験は ... ? それを御紹介するのが本稿の目的となるでしょう。
さて、モノグラムのキットの実物を大阪空港で初めて見てから2年後、
1,972年の夏のお話です。 『御機嫌最高モノグラム!』等の
キャッチフレーズをはじめとする様々なモノグラム伝説が、
雑誌等のメディアを通じて耳に届くものの、田舎住まいゆえ、
実物に巡り会う機会は得られませんでした。

大阪空港での出会いから2年。
遂に意を決し、当時大阪の放出に居た親戚に電話をかけました。
幸い JR(当時はまだ国鉄でしたが)放出駅の傍に、舶来品も扱っている
模型店があるというので、モノグラムとエアフィックスのキット、
代金後払いであれやこれやを買ってきてもらうことにしました。
もちろんモノグラム 1/48 Do335 も依頼しましたが、舶来品は当然、
国産品とは流通頻度が違うので、入手できるか否かは賭けでした。
それを見越して、複数のキットをオーダーしたわけです。

数週間後、その大阪の叔父が母親の実家に帰って来るというので、
キットを引き取りに出かけました。 複数オーダーした物の内、
エアフィックスは全滅。 憧れのモノグラム 1/48 Do335 も無かったとのこと。
入手出来たのはただひとつ。 それがモノグラム 1/72 F-14 でした。
このキットこそが F-14 を模型化した最初のものではなかったでしょうか?
(サニーの 1/100 のほうが早かったかな?)
このキットが私のモノグラム初体験キットとなりました。

ちょうど F-14 が空母フォレスタルを使って空母適合試験を開始した頃で、
離着艦を繰り返す様子をテレビのニュース番組で何度か目にしたものです。
あるいは、F-14 初の実戦飛行隊 VF-1 が編成された頃でしたでしょうか?

Do335 が入手できなかった事は残念でしたが、
米海軍の最新型ジェット戦闘機の初キットを入手できた事で
すっかり舞い上がってしまいました。 ついでに代金にも舞い上がりましたが。
双発複座の戦闘機の模型の代金が \1,200!
(えーと、¥1,600だったかな? とにかく高い!)
あのオイル・ショックの直前であり、長谷川製作所謹製の
1/72 T-33 等が100円玉1,2枚で買えた時代です。
モノグラムの 1/72 F-14 がどれほど高価だったかお判り頂けるでしょう。

## 御機嫌最高モノグラム! 高嶺の花さモノグラム!!

ハセガワの 1/72 T-33 12機分のキットです。 当然期待は高まります。
外箱には“モノグラム”の他に、“マテル”のトレード・マークが
刷り込まれていたのが少々不審ではありましたが、初めて手にする
シュリンク・パックをひっぺがすのももどかしく、箱を開けたとたん、
目がテンになり、松田 優作じゃありませんが
『なんじゃ、こりゃあ〜っ!』と叫びたくなりました。

実機が空母適合試験を行っている頃ですから、
マーキングがでたらめなのは仕方がありません。
胴体上部パーツに一体成型されたコックピットは、
計器盤やシートまで一体成型。
パイロットとキャノピーを接着すればコックピットの組み立て終わり。
水平尾翼は胴体と一体で、左右が連動して可変する主翼を挟んで
胴体上下を接着すれば、組み立ては殆ど終わりという代物。
グローブ・ベーンが主翼と連動して可動する点だけは評価できるものの、
それ以外に褒められるポイントが見つからないという難儀なキットでした。

キット付属のスタンドの代わりに、チャチなギミック付きのスタンドが
別売りで用意されていたようです。 このスタンドに機体を乗せれば、
スタンドから生えている操縦桿の操作に連動して機体が傾くといった、
まるでオモチャのような代物の宣伝がキットの外箱にプリントされて
いたのもマイナス要因でした。 高価な舶来品はやはり、
どこかで高級感を醸し出して欲しいものなのです。

極端なまでに部品の一体化を進め、組み立てやすさの極致を追求した
キットと考えることもできますが、ノズルまで一体成型されているのは
いかがなものかと、子供心にひっかかるものを感じ、
自宅に持ち帰ったキットはそのまま永久封印される事になりました。
自室の在庫の山をひっくり返せば、いまでも手付かずの状態で
出てくるはずです。
F-14 Package img.

DameDame STAMP img. 押入れを引っ掻き回して捜索すること30分。
発掘に成功したモノグラム 1/72 F-14のパッケージ。
購入後35年強が経過。
私のモノグラム初体験は、こうして不幸な結末に終わりました。
この結果、私のモノグラム熱はすっかり冷めてしまい、再燃するのは数年後。
隣町に進出したパルコにポスト・ホビーが出店してくれたおかげで、
こんな田舎でも舶来品の入手が可能になり、さらにバンダイがモノグラムと
提携を結んだことにより、近所の模型店でもモノグラム製品が
安価で入手できるようになってからでした。

## 現在ではハセガワがモノグラム製品の輸入総代理を務めているそうで、
## 国内のどこでもモノグラム製品を見かけるようになったものの、
## バンダイ=モノグラム時代と比較して価格が随分割高な感じがするのに、
## 製品の供給が極めて不安定にしか見えないのはどういう訳だろう?
## 輸入総代理店というカンバンは伊達なのか?

これはずっと後になって知ったことなのですが、実はこの時期、
モノグラムは玩具メーカーのマテルに吸収されてしまっていたそうです。
吸収後、モノグラムが最初に出したキット1/72 F-14 であり、
事情通の間では、モノグラムの今後を占う試金石として
注目されていたキットだったとのこと。

吸収前の路線をそのまま歩ませてもらえるのか、
玩具メーカーの一部門としての路線を歩むのか ... ?
業界事情に通じた全世界のモデラーを失望させたキット
であった事は容易に想像されます。 よっぽどこのキットが不評だったのか、
以後モノグラムは自前の路線を堅持することになったようで、
その後も素晴らしいキットを世に送り出している事は、
今更私ごときが解説するまでも無いでしょう。

マテルとモノグラムが袂を分かつことになったのは
いつ頃の事か不明ですが、現在ではレベルとモノグラムが合併し、
世界に冠たる模型メーカーとして活躍しています。
最近では航空機模型の新作が乏しく、ハセガワのOEMなどで
お茶を濁しているのが残念ではありますが。

ちなみにモノグラム 1/72 F-14 ですが、実は F-14 のモック・アップ
採寸して模型化したものだそうで、実機と異なる部分が多々在るものの、
ある意味貴重なモデルと言えるかもしれません。
このキットは後に、スナップ・フィット・キットに改修されたようで、
今でも店頭で見かける事があるとかないとか。
F-14 のスナップ・フィット・キットは未購入ですので、
キットの出来、不出来に関してはコメントを差し控えますが、
モノグラムの歴史を刻んだ記念碑として購入されるのも悪くはないでしょう。
負の歴史であるのが残念ではありますが。 

TOY ROBOT small img.

モノグラム 1/72 F-14 トムキャット の思い出

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