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### 19.Sep.2,012 ###


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戦後日本の戦車開発史
特車から90式戦車へ
林 磐男 かや書房

本書は、雑誌“PANZER”1,995年7月号から1,996年12月号の連載記事
『一戦車技術者のノート』を纏めた作品である。

本書の奥付等を拝見すると、著者の林磐男氏は、
1,925年 東京の御生まれで、
1,951年 東京大学工学部を御卒業。
三菱重工業(戦後の財閥解体の影響で、当時は東日本重工業)に入社され、
朝鮮戦争時の米軍の軍用車両の修理、オーバーホールを皮切りに、
1,983年に同社を定年退社されるまで、陸自用国産戦車の設計開発に
携わっていらっしゃった方とのこと。
一読者としてはいささか残念な事に、89式装甲戦闘車や90式戦車の開発時には、
既に設計の第一線から退いていらっしゃった時期にあたるらしく、
当時最新の戦闘車両に関する記述は少ないものの、
だからと言って本書の価値を減じる要因にはならない。

特に興味深かったのは、戦後間もない時期の、米軍軍用車両の修理で
糊口を凌いでいた頃から、戦後初の国産戦闘車両“試製56式自走105ミリ無反動砲”
(のちの60式自走106ミリ無反動砲)の開発に至るくだりであった。
敗戦でうなだれていた日本人技術者が、米軍車両の修理作業で鍛えられ、
また、作業を通じて、彼我の技術力のギャップを思い知らされながらも、
高揚感を隠し切れず、矜持を取り戻してゆく様子が垣間見えた思いがした。

大変失礼な話だが、私は国産戦車の開発など、それほど困難な事では無いと
思い込んでいた。 所詮戦車の開発なぞ、ブルドーザーやショベルカー、
乗用車等で培った、ある意味“枯れた”技術の転用で十分賄えることだろうと
高を括っていたが、それが愚かな思い込みである事が本書を読んで思い知らされた。

本書で紹介された、戦車開発に関する技術的側面のエピソードは、
極く限られた範囲内の事象でしかないだろうし、ましてや記事の、
想定される読者は素人が主であろう。
記述は平易にならざるを得ないと思われるが、
開発者の苦労や苦悩は充分以上に伝わってきた。
どのような物であれ、開発には苦労が付き物である事を本書で再認識させられた。
READING PESOGIN
## 技術上のトラブルって、原因が判ってしまうと
## 意外にしょうもない事が多いみたいだけど、
## 原因に辿り着くまでが苦しいんだよね ...
## (経験者:談)


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