『楽園の泉』 - 本書を最初に読んだのは、年号がまだ昭和の頃だった。
時代が平成になって一度読み返し、今回で三度目になるだろうか。
本作品を一言で総括すれば、軌道エレベーターの建設話なのだが、
ストーリーのメイン・ストリームに関わりの無さそうなエピソードが、
途中にいくつも挿入されていて、控えめに述べて『散漫』な印象を拭いきれず、
あまり感心しなかった ー 今回、再読するまでは。
本作品は、大きく分けて4つのエピソードに分割できると思う。
1,
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プロローグ
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かつてスリランカを治めていたカーリダーサ王のエピソード
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2,
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軌道エレベーター建設
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本書のメイン・ストリームを占めるエピソード
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3,
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スター・グライダー
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唐突に太陽系を訪れ、去って行った異星の無人探査機
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4,
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エピローグ
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スター・グライダーの観測結果に導かれた異星人の地球訪問
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補足すると、異星の無人探査機『スター・グライダー』の太陽系訪問は、
軌道エレベーター建設エピソードの途中に、唐突に挿入されている。
スリランカに軌道エレベーターを建てる
(あるいはスリランカの上空から軌道エレベーターを垂らす、と表現すべきか)
のがこの物語のコアなので、ストーリーの冒頭に、古代のスリランカ王である
“カーリダーサ”のエピソードを入れるのは判る。
しかし、スター・グライダーのエピソードはスリランカはおろか
軌道エレベーターにも直接の関係は無い。
このエピソードの意味が解らない。
これが上述の『散漫』な印象、あるいは『とりとめの無さ』を感じさせる主原因であろう。
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