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### 08/Oct/2,008 ###

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楽園の泉
アーサー・C・クラーク 早川書房

*** 巨匠の遺した最高傑作 ***
『楽園の泉』 - 本書を最初に読んだのは、年号がまだ昭和の頃だった。
時代が平成になって一度読み返し、今回で三度目になるだろうか。
本作品を一言で総括すれば、軌道エレベーターの建設話なのだが、
ストーリーのメイン・ストリームに関わりの無さそうなエピソードが、
途中にいくつも挿入されていて、控えめに述べて『散漫』な印象を拭いきれず、
あまり感心しなかった ー 今回、再読するまでは。

本作品は、大きく分けて4つのエピソードに分割できると思う。

1, プロローグ かつてスリランカを治めていたカーリダーサ王のエピソード
2, 軌道エレベーター建設 本書のメイン・ストリームを占めるエピソード
3, スター・グライダー 唐突に太陽系を訪れ、去って行った異星の無人探査機
4, エピローグ スター・グライダーの観測結果に導かれた異星人の地球訪問

補足すると、異星の無人探査機『スター・グライダー』の太陽系訪問は、
軌道エレベーター建設エピソードの途中に、唐突に挿入されている。
スリランカに軌道エレベーターを建てる
 (あるいはスリランカの上空から軌道エレベーターを垂らす、と表現すべきか)
のがこの物語のコアなので、ストーリーの冒頭に、古代のスリランカ王である
“カーリダーサ”のエピソードを入れるのは判る。
しかし、スター・グライダーのエピソードはスリランカはおろか
軌道エレベーターにも直接の関係は無い。
このエピソードの意味が解らない。
これが上述の『散漫』な印象、あるいは『とりとめの無さ』を感じさせる主原因であろう。



*** 以下、ネタばれ有り ***
エピローグで、無人探査機『スター・グライダー』を宇宙に送り出した異星人が、
数千年の時間をかけて恒星間飛行を成し遂げ、地球を訪問する様子が、
物語のラスト・シーンとして描写される。
既に軌道エレベーターは複数機が建設され、それらは衛星軌道上に構築された
一条のリボン状の構造物体、オービタル・リングで相互に接続されるまでになっていた。
軌道エレベーターで地表に降りた異星人を迎えたのは、
進化の次の階段を遂に登り始めた地球人の子供達。
すでに旧来の『地球人類』とはかけ離れた『別のなにか』になりかかっている彼らに、
『地球人類』とは明らかに異なる種族である『異星人』が、
ある問いを発する場面が物語の終章の末尾に描かれてる。

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