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### 26.Dec.2,011 ###


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訃報から
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いささか旧聞に属しますが、去る2,008年3月19日、高名なSF作家である
サー・アーサー・C・クラーク氏がスリランカの自宅で亡くなられました
享年90才。 衷心より御冥福をお祈り致します。

* * *

クラークの著作であることを意識して作品を読んだのは、35年ほど昔。
小学六年生の頃でしたでしょうか。 早川書房が所謂『銀背』に
見切りを付け、新たにハヤカワSF文庫を創刊する直前の頃の事です。
東京創元社の創元SF文庫版『銀河帝国の崩壊』が最初だったと思います。
田舎の小さな書店の文庫本コーナーに無造作に並べられていた、
数冊のSF小説の内の一冊でありました。

アーサー・C・クラークと言えば、映画『2,001年宇宙の旅』の原作者
 ...という程度の、いささか乱暴な認識しか、当時の私の内にはありませんでした。
あの頃の私はSF映画に凝っていたマセたガキで、
『傑作』との誉高い『2,001年〜』が観たくて堪らなかったのでしたが、
ホーム用ビデオ機が御家庭に普及し始める10年ほど前の話であり、
見逃した映画はリバイバル上映を待つか、
テレビの洋画番組で放映されるのをひたすら願うか、
あるいは市販の8mm映画フィルムを買って自宅で上映する
  ... くらいしか手段が無かった時代です。
映像が無理なら、せめて書籍で原作を、と思ったものの、田舎の書店では見つからず。
近場の古本屋を巡って、『2,001年〜』の台本の日本語訳を掲載していた
キネマ旬報のSF映画特集号を掘り出した時は小躍りしたものです。
ですが、やはり台本ではさっぱりイメージが涌かず、閉口したのも事実です。
引き続き原作書(勿論和訳本)も探したものの、なかなか出会えません。
やっと入手したのはその数年後。
隣町の書店に足を伸ばす事を覚えた、ヒネた中学生になった頃でした。

その頃の私は何を読んでいたのでしょう。
近所の書店で入手できる限りのSF文庫本を夢中になって読んでいましたが、
書店に入荷する本には限りがあり、作家を選んで読むような贅沢はできませんでした。
結果、クラークの著書とも付かず離れずの関係が続き、そのまま現在に至ります。

クラークの作品からの決別は、『2,001年〜』の続々編である
2,061年宇宙の旅』を読んだあたりから、だったでしょうか。

クラークは『楽園の泉』を最後に断筆を宣言するのですが、彼ほどのビッグ・ネームを、
世界中のファンと出版社が黙って放置しておくはずがありません。
やがてリスタートを切るわけですが、断筆宣言撤回後の作品群に
もはや昔日の輝きは感じられず、生意気なSF小僧になっていた私は
『クラークも老いたなあ ...』と天を仰いだものでした。

老いはともかく、やはり『楽園の泉』で燃え尽きられたのだと今でも想います。
ともあれ、そんな理由でクラークの作品群から徐々に足が遠のき、
楽園の泉』以前の作品であっても読みこぼした作品がかなりあります。

クラークからの決別などと、現在思えば恐れ多い事を考えたものです。
著者の死去に伴い、彼の遺した作品群もまた、
表舞台から忘れ去られてゆく運命なのかも知れませんが、
可能な限り読みついでいきたいものです。


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