Bookshelf TOP MENU に戻る
Bookshelf 07年 TOPPAGE に戻る

### Recent UPDATED ###
### 27.Dec.2,011 ###

	REVIEW 07-033

麦撃機の飛ぶ空
神林　長平	ヒヨコ舎

神林　長平初（？）のショート・ショート集。 収録作品は以下の13篇。 いずれも1,980年代前半に発表されたもの。 ALL CLEAR 愛しのリューラ ファントム 過速 マシン・チャイルド God be with you ... エデン 怒髪 和の君 とんでもない猿たち 射性 麦撃 炎帝朱夏 全篇が未読作品だったので大変興味深かった。 著者初期の作品群だけに、文体にところどころ 硬いものが見受けられたが、そこがまた初々しく、 微笑ましい、などと私ごときが評したら失礼だろうか。 また、年代が下るに従い、文体が洗練されてゆく様子も垣間見え、 その進歩の急激さにも驚かされる。 特に『愛しのリューラ』、『God be with you ...』、『射性』はお薦め。 『リューラ』のヒロイン、リューラは、 『敵は海賊』シリーズのモウナを彷彿とさせ、結末はやるせなさが漂う。 『God be with you ...』は同著者の『プリズム』や、 谷　甲州の『終わり無き索敵』の読了感に通じるものを感じた。 『射性』は短篇といった趣の作品だが、本書の白眉であろう。 『麦撃』はなにやら今日の世界情勢を暗示しているようで、目を瞠る。 また、『炎帝朱夏』は、雪国・新潟出身の著者ならではの作品だろう。 少々礼を失した発言で恐縮だが、ショート・ショートはある意味、 アイデア頼みの一発芸的な側面があると思う。 神林　長平が本書で提示したアイデア群が、 ショート・ショートの大御所・星　新一のそれに、 決して劣るものではないと思うが、総合的に見て、 やはり本書は星　新一の作品群を越えるものでは無いだろう。 それほどまでに星　新一の力量が圧倒的だということだ。 それでも本書は推薦に値する。 一連の神林作品群のフレーバーに接する良い機会になると思うから。

	REVIEW 07-033

Bookshelf 07年 TOPPAGE に戻る
Bookshelf TOP MENU に戻る