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### 27.Dec.2,011 ###


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ブレードランナー 2 レプリカントの墓標
K.W. ジーター 早川書房

今なおカルトな人気を誇る映画 『ブレードランナー』。
米国の著名SF作家である P.K.ディックの代表作の一つ、
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を下敷きに、
ややエンターテイメント色を濃くした作品であったように思う。

本作品は、原作者ディックの没後に、別の作家の手で著された『続編』である。
小説であるものの、映画の続編といった趣の作品であることは、
タイトルからも判断できよう。

映画にはひとつ、解明されない謎があった。
地球に侵入したレプリカントは6体。
うち1体は、タイレル社に正面から進入を試みて処分された。
残り5体のうち4体は、主人公のデッカードとの対決の末に処分された。
そもそも警察署のシーンで、デッカードが処分を命じられたレプリカントは4体だった。
では、残り1体はどうなったのか ... ?
映画(の字幕)を見る限りでは、なにも説明されていないようだった。
セリフの誤りか? ... とも思われたが、映画公開後に作製された
『ディレクターズ・カット版』でも問題のセリフは修正されていない等から、
映画の Part - 2 への布石と取る向きもあったようだ。
 (人間のハズである登場人物が、実はレプリカントだったと勘ぐる向きもあったが)
映画のラストでデッカードは、レイチェル
(タイレル社社長の姪の記憶を移植されたレプリカント)と共に、
酸性雨の降るL.A.を脱走する。 本作品は、その1年後から始まる。
オレゴンの山中の、打ち捨てられた山小屋で暮らすデッカード。
その傍らには、カプセルの中に横たわるレイチェルの姿。
レプリカントの限られた寿命を少しでも延ばすため、
棺に似た冬眠カプセルに入ったのだ。
そこに突然、レイチェルと瓜二つの女性が現れるところから、
本書のストーリーが滑り出す。

彼女はサラ・タイレル。
タイレル社の社長の姪で、レプリカント・レイチェルの原型。
タイレル一族の唯一の生存者である彼女は、一族の遺産の全てを相続した。
つまり、タイレル社の社長の座をも相続したのだ。
彼女はデッカードに、逃走中の6体目のレプリカントの処分を命じに来たのだ。
果たして6体目のレプリカントとは誰なのか。
そもそも6体目は実在するのか ... ?

完成された小説である『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の
直接の続編としてではなく、映画『ブレードランナー』の続編として著されたのは、
方法論としては正しいと思う。
ストーリー自体は面白くないわけではないのだが、
ストーリーの展開はやや強引と言わざるを得ない。
特にサラのキャラクター。 いくらレイチェルの原型であるとはいえ、
直接会ったこともない男性をいきなり愛する事ができるものだろうか ... ?
また、レイチェルの扱いがあんまりで、泣けた。 

発売当時の書評を見た限りでは、芳しい評価を得ていなかったようだったが、
まさにそのとおり。 良く書けたファン・ジンとでも言うか、
『蛇足』という言葉こそが一番似合いそうな作品であった。


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