鶴田 謙二氏描くところのカバー・イラストに釣られて
読み始めたものの、読後感が重くて気分が落ち込み、
ある意味、最低の部類でした。
時代はおろか、舞台すら定かではない土地で
果てしなく繰り広げられている戦いを描いた作品。
戦闘機パイロットを生業としている主人公の視線で
ストーリは展開してゆきます。
空戦は、単なる日常生活の延長線上にあるものに過ぎないのか、
全ては不自然なまでに淡々と語られ、それが一種異様ですらあります。
(サン・テグジュベリの一連の作品のように、
抑えた文体で描かれているせいでしょうか?)
終盤、物語のキーワードである『キルドレ』の説明がなされ、
純粋な子供の魂を大人の身体に封じ込んだような
パイロット達の生き様が、ようやく得心できるようにはなりますが、
このエンディングはないだろう、というのが正直な感想です。
ストーリーの流れの果てにある、必然であるエンディングであることは
納得できますが、心情的にどうか、という意味です。
なぜか(はネタバラシになるので説明しませんが)
ロバート・A・ハインラインの“メトセラの子ら”を思い出してしまいました。
この作品は、いまだ語られぬ物語の長いプロローグのようでもあり、
そろそろ続編の発表がありそうです。
巻末に、続編“ナ・バ・テア / None But Air”の告知があります。
2,003年、ハードカバーで出版予定とのことです。
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