A/C TOPPAGE に戻る
本稿の一番下に跳ぶ

### Recent UPDATE ###
### 13.Sep.2,015 ###


LS 1/144 LOCKHEED SR-71 "BLACK BIRD"

懐かしいLSのキット。
馴染みのメーカーが
無くなるのは寂しいねえ ...
witch img.

*** 実機について ***
高々度スパイ偵察機 U-2 の後継機として開発されたSR-71は、
米空軍が運用したマッハ3クラスの超音速戦略偵察機であり、
その源は、CIA用の単座スパイ偵察機として開発されたA-12である。
SR-71とその御先祖様であるA-12はまた、世界初の実用ステルス機でもある。
ちなみに“A-12”とは、機体メーカーのロッキード社内での設計・開発時の呼称である
“Archangel(大天使 / 天使長)”の第12番目の設計案が採用されたことに由来する。
これはU-2の社内呼称が“エンジェル / ケリーズ・エンジェル”であった事から、
U-2を超える機体に相応しい名称として選ばれたと云う。
“A-12”シリーズは18機生産され、うち1機は訓練用複座型のB型である。
2機は複座の“M-21”として完成し、無人偵察機“D-21”の運用試験に用いられた。
また、3機は生産途中で戦闘機型である“AF-12”(後に“F-12”と改称)の
試作機に転用され、“YF-12”として完成された。

SR-71の直接の源流は、ロッキード社が空軍に提案した、
“A-12”の複座偵察機型“R-12”である。
空軍の上層部には、戦略偵察任務は空軍が担当すべきであるとした思想が根強く、
高性能偵察機は歓迎された。
ただし、多用途機とした方が予算獲得上望ましいと考えられた事から、
空軍の正式名称は“RS : Reconnaissance Strike : -71”とされた。
不採用に終わった“XB-70”の偵察攻撃型“RS-70”に続く機体の意であったと云う。
ところが1,964年7月24日、時のジョンソン大統領が、米空軍がSAC向けに
マッハ3クラスの戦略偵察機を開発中と公式に発表した際、
“RS-71”と言うべきところを誤って“SR-71”と発表したものだから、
空軍が慌てて“SR : Strategic Reconnaissance / 戦略偵察”というカテゴリーを
新設する事になったエピソードは御存知の事だろう。
その他、“SR-71”全機を生産するのに必要なチタン合金の総量が、
当時のアメリカの年間チタン総生産量の全てを投入しても不足であったため、
ダミー会社を興して、チタンをソ連から輸入したところ、
米国産より高品質のチタンが届いたり、生産機数を秘匿するために
シリアル・ナンバーを書き換えて飛ばしたなど、エピソードには事欠かない機体である。

“SR-71”シリーズの総生産機数は新造機が31機だと云うが、
その他に、事故で大破した“YF-12A”1号機の後部胴体と
“SR-71・静荷重試験機”の前部を組み合わせた機体が
“SR-71C”(SR-71Bに準じた複座練習機)として完成しているので、
機数は合計32機になる。
その32機の内訳は以下のとおり。
“SR-71A” 29機 “A-12”から発展した複座戦略偵察機。
生産機数には下記の“SR-71A/BT”1機を含む。
“SR-71A/BT” (1機) “BT : Big Tail”
SR-71 8号機のテイル・コーンを延長したテスト機。
テイルには偵察機材やECM機器等を積む予定であった。
上述のとおり、機数は“SR-71A”に含んだため、未カウント。
“SR-71B” 2機 後席を一段高くした複座型練習機。
エンジンナセル下面にベントラルフィン追加。
“SR-71C” 1機 “SR-71B”に準じた複座型練習機。
概要は上述。
“A-12”の派生型としては“SR-71”の他、長距離要撃機型の“AF-12”
(後に“F-12” に改称)も提案され、試作機の“YF-12”が3機生産されはしたが、
ベトナム戦争激化に伴う国防予算見直しのあおりを喰らいキャンセルされた。
その他、“B-12 / RB-12”(A-12の爆撃機型 / 偵察爆撃機型)、
“B-71”(SR-71の爆撃機型)等が空軍に提案されたが、
いずれも計画のみで不採用に終わった。


製 作


購入したのは確か、前世紀末。 滋賀県某所のバイク屋さん兼業の模型店で購入。
なんでもバイク屋さんの御主人が『機動戦士ガンダム』に感動し、
増築した店舗でバンダイのガンプラを扱いだしたのが始まりと聞き及ぶが、定かではない。
店舗の存在をネットで知り、たまたま近くを通りかかったので立ち寄ってみたところ、
棚の隅でホコリを被っていたこのキットを発見。 保護した次第。
1/144 SR-71 Pkg.Img.
1/144 でありながら、機体はそこそこのボリューム。
プロポーションに破綻は無いように見える。
プラスチックの成型色は黒。 経験上、黒いプラスチックは脆いように思われるが、
このキットも例外では無いようだ。 単にプラスチックが古いせいかも知れないが。
パーツのエッジは薄くてシャープなのだが、プラスチックが脆いので整形作業時は注意を要す。
エンジン・ノズルの縁にあるゲート痕を水ペーパー等で整形処理中、エッジが欠ける。
欠けたエッジ部分に瞬間接着剤を垂らし、補強した上で再整形。

小スケールゆえ、ディティール・アップは不必要とは思うが、気になる点がいくつか。
  • 前席キャノピーがクリアー・パーツなのに対し、後席ウィンドウがムク
  • 主脚庫がガランドウ
いずれも些細な事で、無視しようかと思ったが、せっかくなので手を入れてみた。
以下はその記録。

*** 後席ウインドウのクリアー化作業 ***
前席キャノピーは、全体がクリアー成型の別部品なので、開閉選択が可能だが、
後席キャノピーは機体と一体成型。 つまり閉状態でモールドされている。
後席キャノピーが閉ならば、前席もクローズしたほうがバランス上、具合が宜しかろう。
コックピットは前、後席ともがらんどうだが、スケールを考えれば、再現しても無意味だろう。
キャノピーが閉状態なら、なおさらである。
したがって、後席ウインドウのクリアー化だけを行うことにした。

後席のウインドウのサイズは 1.0 x 3.0mm。
ピンバイスやデザイン・ナイフ、小型金ヤスリで、モールドの位置に長方形の穴を開けた。
この穴にクリアー材を嵌め込み、磨きあげれば作業終了だが、問題なのはその部材。
1mm 厚の透明アクリル棒があればベストだが、御生憎。 そんな便利な物は無いらしい。
CD ケースの割れた蓋が丁度 1.0mm 厚のクリアー材だったので、
これから 3.0mm 幅の短冊を切り出し、開けた穴に嵌め込み、瞬間接着剤で固定。
たったこれだけの作業で1日仕事だった。
クリアー材が固着後、クリアー材が機体パーツと面一になるよう、
水ペーパーの #400、#800、#1,000、#1,500 を使ってクリアー材を表裏から削り、
最後はコンパウンドで磨き出した。 やや磨き足りないようにも感じられるが、
小さな部分なので、透明感がそこそこ得られれば充分だろう。

*** 主脚庫のでっち上げ作業 ***
首脚庫は天井が再現されているのに、主脚庫は全く再現されていない。
脚庫の左右が筒抜けで、天井も無視されている。
小さなキットの、しかも裏側の事なので無視したほうが精神衛生上好ましかろうが、
せっかくなのでプチ改修してやる事にした。

天井を追加し、左右が筒抜けの主脚庫の中央に仕切り板を付ければ充分だろう。
まず、機体上面パーツ裏側、主脚庫の位置に、長方形に切り出した0.5mmプラ板を接着し、
脚庫天井に見立てた。 その中央に、機軸に沿って2.0mmプラ棒を接着。
左右主脚庫の仕切り板のガイドである。
* * *
ここで一時、脚庫でっちあげ作業を中断。
コックピットの周囲や内側等、キャノピー・ウインドウを通して覗けそうな部分を
Mr.Color #33 で塗装。 よく考えたら、ウインドウは極めて小さかったので、
無理に塗装する必要は無かったかも知れない ... 迂闊だった。
機体のプロポーションから判断するに、オモリは不必要かも知れないが、
念のため機首に小さな鉛板の欠片を仕込んだ。
オモリを固定するエポキシ系接着剤が乾いたら、胴体上下を接着。
脚庫でっちあげ作業を再開。
* * *
胴体上下を接着後、現物合わせで切り出した 0.5mm 厚のプラ板等を
脚庫内部に貼り合わせ、箱組み。 胴体の外にはみ出したプラ板は、
接着剤を充分乾かした後に削って、胴体と面一にする。

組立作業上最大の難所は、タカラ・レベル 1/72 SR-71 と同様、
外翼 / エンジン・ナセル上面内側部分の接着である。
胴体と一体成型のエンジン・ナセル下面にマッハ・コーンを接着。
マッハ・コーンをガイドにして、外翼部とナセル上面内側部を接着すれば終わりなのだが、
パーツの小さな 1/144 だから、力技でなんとかなるだろうと油断した。
接着しても接着してもパーツの位置が決まらない。 瞬間接着剤まで使って
無理矢理接着したものの、はみ出した接着剤でパーツの継ぎ目が悲惨なことに。
1/72 同様、内側にガイドを追加して、慎重に作業を行うべきであった。

胴体の整形作業と筋彫の再生がある程度進んだ時点で、エンジン・ノズル前半を接着。
タカラ・レベルの 1/72 同様、エンジン・ナセルとエンジン・ノズル前半の間に
段差や隙間が生じる。 パーツの分割・構成が同様なら、欠点も同一である。
エンジン・ナセル上面・外側半分と一体成型された外翼部を
胴体に接着する際に調整を怠ったツケが回ってきたわけだ。

ピトー管と一体成型されたレドーム・下半分は、折れ易そうなピトー管保護の為、
一番最後まで接着を見合わせていた。 どう転んでも近い将来、折れる運命にあるのならと、
ピトー管は 0.4mm の真鍮線と 1,0mm の真鍮パイプを組み合わせて自作した物に置換。
スケールを考慮すると、もう少し細い真鍮線を使うべきであるが、0.3mm の真鍮線では
あまりに強度不足なので、これが細さの限界であろう。


塗 装


塗装箇所 使用塗料 備考
コックピット Mr. Color # 33
“つや消し黒”
ウインド・シールド等のクリアー部分から覗けそうな
機体内部部分を塗り潰した。 考えてみれば、
ウインドウは全て小さいので、塗装する必要は無かったか?




参考資料 (順不同)


SR-71 ブラックバード 世界の傑作機(新装版) # 100 文林堂


岐阜県岐阜市。 現在、岐阜県美術館等が在る一角の北西、
JR 東海道線の線路の程近くにかつて、『LS』という模型メーカーの社屋がございました。
東海道線を西に向かうと、JR 岐阜駅を過ぎてすぐ、左手の車窓に望めました。
この模型メーカー、創業時の社名を『サンライト科学模型製作所』と申しまして、
社名のイニシャル『S.L』をデザインしたロゴをトレード・マークにしていたのですが、
大振りな『L』の字の縦棒に小振りな『S』の字がからみ付くようなデザインであったため、
誰も『エス・エル』と読み解くことができず、『LS』と呼ばれ続けたため、
いつしか社名も『エルエス』に改称したとか。
1,992年に突然倒産し、金型の多くは埼玉の有井製作所に引き取られたそうで、
同社から時々、旧 LS の製品も再販されています。
そのような経緯で、このキットも入手は不可能ではないとは思いますが、
アリイからの再販が不定期なのは困り者。
現代でも十分通用するプロポーションを誇るキットだけに、流通が不定期なのが残念です。
* * *
このキット、作りかけの状態で他人様にお見せしたら、
開口一番『ちっちぇ〜っ!!』と嘲笑われました。
内心ムカっとして作り始めた(製作再開?)のがこのキットであったりします。


LS 1/144 LOCKHEED SR-71 "BLACK BIRD"


本稿の一番上に跳ぶ
A/C TOPPAGE に戻る