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### 24.Nov.2,014 ###


ITALERI 1/72 SR-71 “BLACKBIRD” w/ GTD-21

無人偵察機“GTD-21”を運用したのは
“SR−71 BLACKBIRD”じゃなくて、
“M−21 MOTHERGOOSE”なのよね ...
witch img.

2,011年春の某模型サークル展示会の御題が“偵察機”と決まったため、
タカラ - レベルの1/72やLS1/144のSR-71を弄ってみましたが、
いずれも帯に短し襷に長しで、どうにも決まらない。
それでつい、手を出してしまったのがイタレリ版であります。
これもSR-71として作るつもりでしたが、
キットには無人偵察機“GTD-21”が同梱されています。
SR-71はGTD-21を運用した実績が一度も無いのですが、
折角なの背負わせてみる事にしました。
“模型としての演出”ということで御容赦願います。

*** SR-71 の実機に関しては、LS 1/144 SR-71 の稿を参照のこと ***

*** 無人偵察機 GTD-21 の実機について ***
GTD とは"Ground Traning Doughter"の略。 “Ground Traning”は
GTD-21 の本来の任務を秘匿するために付与された無意味な接頭記号である。

D-21 Drone (Drone とは軍用無人機の総称)の CIA の計画コードネームは
“TAGBOARD / 荷札”である。 D-21 には空軍も協力しているが、
計画自体は CIA の管轄下にあったため、軍用機としての正式名は無い。
D-21 の発案者はロッキードのクラレンス“ケリー”ジョンソンであったらしく、
D-21 計画は1,962年10月頃スタートし、翌年の10月頃には設計が確定していたという。

D-21 は、マークォート RJ43-MA-11 ラムジェットを動力とした、使い捨ての無人偵察機である。
母機からの空中発進等の手段で初速を得てエンジンを始動した後は、慣性航法装置(INS)を用いて、
事前にセットされたコースを自律飛行し、写真偵察ミッションを実施する。
ミッション終了後の D-21 は、プリセットされた回収予定地点まで帰還し、
空中でカメラ・カプセルを切り離した後に自爆。 機体はそのまま投棄される。
切り離されたカメラ・カプセルは空中で、待機していた JC/HC-130 ハーキュリーズに拾われるか、
ハーキュリーズの空中回収失敗に備えて洋上待機している水上艦艇に回収される手筈であった。

D-21 の母機には当初、単座機 A-12 を複座化し、
後席に発射管制官(LCO / Launch Control Officer)を乗せられるようにした
M(Mother の略)-21 が2機(S/N : 60-6940, 41)用意されたが、
1,966年7月31日の第4回空中発進テストの際、母機(M-21 2号機)から分離した直後の
D-21 が母機と空中衝突。 母機は墜落したが、パイロットとLCOは脱出に成功。
二人は太平洋上に着水したものの、LCO のレイ・トーリックは
与圧服の中に浸入した海水で溺死した。
この事故のため、D-21 / M-21 計画は破棄された。

D-21 計画自体は破棄された訳ではなく、母機を B-52H に変更して存続が図られた。
B-52H の飛行速度のみでは D-21 のラム・ジェットの始動に必要な初速が得られない為、
D-21 に巨大な固体ロケット・ブースターを接続して再加速を図ることになった。
この D-21B と B-52H の組み合わせによる実戦ミッション(いずれも中国への偵察飛行)は
都合4回実施されたが、D-21B が回収予定地点に帰ってこなかったり、
帰還はしたもののカメラ・カプセルの回収に失敗したりで、一度も成功しなかった。
かくして D-21 計画は完全に廃棄されることとなった。

D-21 シリーズは合計38機が製作され、21機がテストや実戦で消費された。
残りの17機はモスボール処理され、GTD-21B の名でデイヴィス・モンサン空軍基地に保管された。
*** 参照 : 航空ファン誌 2,010年11月号 P.72〜 ***


製 作


1/72 SR-71 BOXART img.
*** ITALERI 1/72 Scale No.145 ***

*** SR-71 (M-21モドキ) ***
機体のパーツ構成は、前胴部上下を後胴部上下に接着する構成。
タカラ・レベルのキットと異なり、エンジン・ナセルが一体成型されているおかげで、とても組み易い。
しかし、だからと言ってすんなり組み上がらないのがイタレリのイタレリたる所以である。

機体は大きく分けて前胴部上下、後胴部上下の4分割構成。
前胴部と後胴部が一体成型のハセガワなどのキットと異なり、イタレリのキットが
4分割セパレート構成なのは、YF-12とSR-71のバリエーション展開に伴う処置と思われる。
さらにSR-71は、純粋な偵察型である“A型”と、練習機型である“B(C)型”のコンパチブルであり、
そのため、さらに細部が分割されている。

このキット、パーツの勘合自体は決して悪くはないのだが、
接着部分のベロが短かくて、接着強度が不足しがちになるようだ。
また、ベロの厚みが不足している部分もあるようで、接着面に段差が生じる部位も見受けられる。
金型も少々疲弊しているらしく、パーツのエッジのそこここに薄いバリが生じている。
とにかく、全てのパーツに手直しが必要で、パーツ数が少ない割に組立ての手間がかかる。
いかにも“イタレリ・スタンダード”なキットである。

まずは凸線で表現されたパネル・ラインの凹線化。
機体が平たいので、左程の苦労は無いだろうと思ったのが甘かった。
左右シンメトリックな筈のパネル・ラインが微妙にズレているような。
左右対称の位置にあるはずの表面モールドの位置がズレているのか、
ボディの経時変形が影響しているのか ... ?
矛盾がなるべく目立たぬよう、ごまかしごまかし線を彫る。
パーツの段階で彫れそうな線は極力彫り、パーツを組み合わせないと彫れそうもない線は後回し。
大きな曲面を描くエンジン・ナセル上面のラインが難しい。
秘蔵の(?)ダイモ・テープをガイドに奢り、なんとか彫り上げた。

まずは後胴部上下を接着。
パーツの勘合自体は悪くは無いが、事後変形を起こしているのか、接合線に隙間が開く箇所がある。
部分的に 0.1mm 厚のプラ板の欠片を埋め込んだり、パテを盛ったりして修正。
お湯の廻りが悪かったのか、エア・インティーク内舷側の接合線直下に三角形の窪みが見受けられる。
窪んだ部分に 0.5mm 厚のプラ板の欠片を瞬間接着剤で貼り付け、水ペーパー等で整形。
内翼前縁のエッジが邪魔で、整形が難しい。

機首下面の5つのカメラ窓にはクリアー材が用意されているものの、
窓のパーツがヒケていたり、窓枠との間に隙間が空いたりする。
窓を機首下面に接着後、クリアー部材のヒケた部分に瞬間接着剤を盛り上がるように塗り、
接着剤を充分乾燥させた後、#400 〜 #1,500 の水ペーパーとコンパウンドを用いて磨いた。
ヒケはおおむね解消できたが、曇りが一部取れなかった。
再度磨き直せば雲りも解消できそうなのだが、時間の関係で断念した。

SR-71 単体ならともかく、胴体に D-21 を載せるならばテイル・ヘビー気味になりそうなので、
説明書に記載は無いが、念の為、機首にオモリを仕込んだほうが良いだろう。
首脚庫の直前あたりに鉛板の欠片を忍ばせておいた。
*** SR-71 機首下面内側之図 ***
SR-71 Nose img.
*** 白いプラ板はオモリの押さえ ***

上下を接着した後胴部に、機首下面を接着。
機首下面の根元が薄すぎるのか、機首下面が後胴部内側に潜りこんでしまう。
0.1mm 厚のプラ板のストリップを機首下面内側に接着し、面一になるよう調整。
また後胴部内側にモールドされたストッパーが薄すぎて、接着強度が稼げない。
エポキシ樹脂系接着剤や瞬間接着剤、流し込み系セメント等を適時用いて、がっちり接着した。

コックピットはバスタブ・タイプ。
計器盤と前後席後方の隔壁は機首部胴体上面に内側から接着し、
その上でバスタブ式の床をセットするのだが、床が胴体上面に接触する場所がほとんど無い。
左右1箇所、点接触する場所があったので、まず瞬間接着剤を流し込んで固定。
プラ板の欠片を適当に切り出して作った梁を床の裏と胴体上面に渡し、
エポキシ樹脂系接着剤等で接着した。

*** GTD-21 ***
総パーツ数僅かに6個。
母機との接続パイロンを含めても7個に過ぎないのに、
一筋縄で終わらないのがイタレリのイタレリたる所以である。

機体は上下2分割。
そこに2分割構成のマッハ・コーン、テイル・パイプ、垂直尾翼を接着する構成。
まず、機体上下が合わない。 勘合自体は良好なのだが、
下面パーツが上面パーツの内側に潜り込んでしまう形で、パーツの分割線に段差が生じる。

段差が生じる部位、下面パーツの接着部分のエッジの内側に、
幅5mmの短冊状に切り出した0.1mm厚のプラ板を瞬間接着剤で接着。
プラ板を貼ったことで逆に出っ張ってしまった部位は、水ペーパーで削り合わせて調整。
ある程度の調整が終わったら、機体上下パーツを接着。
接着線の隙間や、調整し切れなかった段差にはパテを盛り、修正。
パーツ段階で彫っておいたパネル・ラインが、削られて消える。
ラインはあらかじめ深く彫っておいたつもりだったのだが ...
とにかくパテを盛り、ペーパーで削り、ラインを彫り直す。 この繰り返し。

ランナーと胴体上面パーツを繋ぐゲートの位置が無神経。
主翼の前縁が薄いのは良いのだが、その前縁に直接ゲートが繋がっている。
キットを保管している間にゲートが自然にモゲて、主翼前縁の一部が丸く欠けた。
丸く欠けた部分をカッター・ナイフで四角く整え、0.5mm厚のプラ板の欠片を穴の形に整形して移植。
瞬間接着剤で留め、プラ板では厚みが足りない部分にはパテを盛り、金ヤスリや水ペーパーで整形。
ちょっと見たくらいでは判らない程度の補修はできた。

*** D-21 上面之図 ***
D-21 img. - 01
*** D-21 右舷主翼の白く見えるところが補修した部分 ***

お湯の廻りが悪かったのか、エア・インティークの脇の接着線上には
底辺0.5mm、高さ5,0mm程度の3角形の隙間が生じる。
主翼前縁の補修作業同様、3角形の隙間を長方形に整え、0.5mm厚のプラ板を差込み、
瞬間接着剤等で接着。 塞ぎきれなかった部分にはパテを擦り込み、ヤスリで整形。

機首エアインティークには正面からマッハ・コーンを接着するのだが、
胴体内側にモールドされたストッパーの間隔がマッハ・コーンの底の直径よりやや広い為、
マッハ・コーンがうまく留められない。 無理して留めようとすると、マッハ・コーンが上を向く。
これらの対策として、マッハ・コーンの底の上半分に0.5mmのプラ板の欠片を貼って、、
コーンの直径を増やすのと同時にコーンが水平に向くよう調節したつもりだったが、
コーンが思ったほどストッパーに引っ掛からない。
仕方が無いので、上下ストッパーの間に4mm x 9mm 程の四角いプラ板を差し渡し、
その前にコーンを接着した。 始めからこうすれば良かった ...

マッハ・コーンを弄っていたら、コーンの先端のピトー管が折れた。
0.5mm の真鍮線に置換。 真鍮線の根元にパテを盛り、コーンの先端とスムーズに繋がるよう
整形しようと努力したが、調整が甘かったかような。

垂直尾翼はややヒケが見受けられるが、無視して胴体に接着。
機体だけでたった6パーツなのに、組むだけでえらく苦労したような ...


塗 装


*** SR-71 ***
塗装箇所 使用塗料 備考
コックピット内部 Mr.Color #13
“ニュートラル・グレー”
胴体内部は一部Mr.Color #33“艶消し黒”
計器盤 Mr.Color #33
“艶消し黒”
Mr.Color #33“艶消し黒”で下塗り、
Mr.Color #13“ニュートラル・グレー”で上塗りした後、
資料を確かめたら、正面パネル全面が黒だったので、再度塗り直し
コックピット表面
アンチグレア部分
Mr. Color #33
“艶消し黒”
カメラ窓(内側) Mr.Color #101
“スモーク・グレー”
Gaia #046 “クリアー・ブラウン”のほうが良かったかも ... ?
エンジン・ノズル Mr. Color #33 “艶消し黒”で下塗り
スミ入れ
ウオッシング

*** GTD-21 ***
塗装箇所 使用塗料 備考
エンジン・ノズル Mr.Color #61
“焼鉄色”
Mr. Color #33 “艶消し黒”で下塗り
スミ入れ
ウオッシング


*** SR-71 ***
正直、自分でも無意味だとは思うが、胴体内部、胴下のカメラ窓から覗けそうな部分には
Mr.Color #33 “艶消し黒”を塗っておいた。
カメラ・ベイの内側は空洞なので、目隠しの為、カメラ窓は内側から
Mr.Color #101 “スモーク・グレー”で塗装。

*** GTD-21 ***
SR-71 と差別化を図るため、エンジン・ノズルを Mr.Color #61“焼鉄色” で塗ってみたものの、
妙に浮いた感じになってしまった。


参考資料 (順不同)


SR-71 ブラックバード 世界の傑作機(新装版) # 100 文林堂
航空ファン
2,010年11月号 P.72〜
謎の無人偵察機ロッキード D-21 文林堂
世界の珍飛行機図鑑 西村 直紀 グリーンアロー出版社

LS 1/144、タカラ=レベル 1/72、イタレリ 1/72 ときて、ウチの在庫の SR-71 のキットは
残すところ、ハセガワ 1/72 とモノグラム 1/72、タミヤ=イタレリ 1/48 くらいか。
アカデミーの 1/72 (ハセガワ 1/72 の凹線化コピー?)は買いそびれたんだよなあ。


ITALERI 1/72 SR-71 “BLACKBIRD” w/ GTD-21


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