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“Monogram 1/48 F-8E”の一番下に跳ぶ

### Recent UPDATE ###
### 01.Sep.2,009 ###


ハセガワ・モノグラム 1/48 F-8E クルーセイダー

プロポーションは
さほど悪くは無い。
ハセガワの決定版が存在する以上、
製作する意味は...?
witch img.


2,002年後半、ハセガワから 1/48 F-8 クルーセイダーが発表になりました。
勿論まっさらの新金型です。 市場投入は少し遅れて、2,003年01月頃だそうですが。
F-8 フリークにすれば朗報のはずなのですが、私の耳には最悪のニュースであります。
ご想像のとおり、ウチにはモノグラムの 1/48 のキットが山を成していたのです。
いったいいくつ在ったやら。 ... たぶん10機はあったはず。

ハセガワ製がリリースされたら最後、自分の心象世界において
モノグラムのキットは不良在庫に転落しかねません。
P-47 の例もあるので、即断は危険ですが ...
(製作を開始して10日後にリリースされました)


*** 実機について ***

“The LAST GUN FIGHTER”
F-8 CRUSADER = 米海軍初の実用超音速艦上戦闘機

『史上初の超音速ジェット艦上戦闘機』のタイトルこそ、
ライバルのグラマン F-11 タイガーに献上したものの、
その後の実績は同機を大きく凌駕した。
艦隊防空用昼間戦闘機として開発されたが、
エンジン強化やアヴィオニクスの換装を経て全天候戦闘機として発展。
末期には戦闘爆撃機としても活躍した。

原型機(XF8U-1)初飛行 : 1,955年3月25日。
初飛行時に早くも音速を超えた。
(処女飛行で音速を超えた史上初の機体はクルーセイダーらしい)
キット化されたE型は、事実上クルーセイダー最後の生産型である。
(E型以降のJ,K,H型は、旧型からの改修型)
すらりと伸びた胴体に機銃4門を装備した凛々しい姿はまさしく漢!!
当たりもしない AIM-7 に頼り、ガン1丁すら持ち合わせぬ
F-4 なんざぁぺぺぺのぺっ!であります。
(所詮 F-4 は“醜いアヒルの子”でありますから)

*** キット概観 ***
1/48 の F-8 のキットは、オーロラ/リンドバーグ/エッシー/モノグラム
そしてハセガワの5種類。
オーロラとエッシーはメーカー自体が消滅し、初版が1,960年のリンドバーグ製は絶版なので、
ハセガワのニューキットがリリースされるまではモノグラム製が唯一の選択肢。
(2,003年にイタレリが、エッシーのE型のキットをH型として再販するそうだ)
本稿で扱うモノグラムのキットは、リリースされたのが1,988〜89年の事らしい。

当初、モノグラムのF-111等と同様、オーロラ製の金型の修正版かと懸念されたが、杞憂だったらしい。
全体形に破綻は無く、まさにF-8のイメージどおりの形状である。
グレーの整形色上に施された、モノグラム特有の凸線で表現されたパネルラインは上品で、絶品である。
 (それゆえ表面処理が困難で、おいそれと作れないのがモノグラム最大の欠点であるのは皮肉だ)
ただし、左右対称であるはずのパネルの位置が胴体左右で微妙にズレていたり、
省略されている(引き忘れた?)ラインもある
ようだ。

長らくクルーセイダーの決定版として君臨キットではあったが、欠点が無い訳ではない。
クルーセイダーの最大の特徴といえば、まず主翼の可変取付角機構が思い浮かぶのだが、
胴体内側の主翼取り付け位置に何のモールドも無いため、主翼を持ち上げたポジションで固定しようとすると
からっぽの胴体内側が丸見えになってしまう。 実機では機体の構造材やらエア・ダクトなどが
剥き出しになっていて、ディティールが複雑であり、模型では見せ場の一つになるのだが。
また実機では、主翼を持ち上げると同時に全縁フラップやフラッペロンが自動的に連動して動くのだが、
キットでは動翼が主翼と一体となっているので、再現するのに手間がかかる。 これも残念である。

垂直尾翼後縁上端に取り付けられたECM(RWR?)アンテナも、3種類ほどバリエーションがあるようだが、
キットでは垂直尾翼とECMアンテナが一体なので、バリエーション展開を望むなら自作が要求される。

コックピットは良いでき(サイド・コンソールはちょっと?)だが、射出座席がいただけない。
  なぜか GRU-7 系(F-14 や EA-6B 等に装備されている)とおぼしきシートが用意されているのだ。
1/48 のマーチンベイカー Mk.5 もしくは Mk.7 を自前で調達しなければならないのが最大の問題である。
ハセガワ・モノグラム版にはホワイト・メタル製のマーチンベイカー Mk.5 が同梱されているが ...)
J型用の大型化された水平尾翼、C型用の短ノーズ、垂直尾翼のECMアンテナ等が
別部品として用意されてさえいれば、背中のハンプバックを削るなどの手間はかかるとはいえ、
J型、K型、H型といったバリエーション展開もできただろうと思うと、少々残念な思いを禁じえない。


製作


上品な凸線で表現されたパネルラインやファスナーを消すのは忍びないが、
現在の自分のスキルでは、接着面付近のモールドを消さずに製作することは不可能と判断。
1ヶ月間悩んだ挙句、スクライビングを施しながら製作することにハラを決めた。
幸いパネルラインは比較的単純で、パーツ数も少ないことだし、2機同時に製作してみる事にする。
まずは2本ある胴体を“Alpha”、“Bravo”と命名。 ペア同士でスクライビングを施す予定。
これは接着面付近のパネルラインを不連続にしないようにする為の処置である。

*** 主翼 ***
左右一体;上下分割の内翼に、左右外翼を接着する形式。
その分割方式から、主翼は折りたたみ位置にすることもできるが、
胴体内にモールドが何もないので、ストレート組みでは主翼を持ち上げ位置に固定できない。
主翼を持ち上げ位置にすると、実機では動翼が連動して動くのだが、
模型の動翼は全て主翼と一体整形なので、ここの改修も必要になる。

主翼内翼部上下の勘合性は良好だが、外翼部と内翼の間には 1mm 程度の隙間が生じる。
折りたたみ位置で分割されているので、目くじらを立てる程では無いかも知れないが、強度が不安。
外翼を接着し、サーフェイサーを吹いてから隙間対策を考えよう。
内外翼の接着面は小さく、力が加わり易い部分でもあるので、補強用の真鍮線を1本通してから接着。
ヒンジ部分の形状の関係で、真鍮線を複数本通すと内外翼の接着が難しくなるので、1本で我慢。
上下分割の内翼に比べ、一体整形の外翼部のほうが厚いので、
内翼部の前縁に 0.5〜0.3mm 程度のプラ板を噛ませておけば良かったと後悔しても後の祭り。

主翼中央部(胴体の中に隠れる部分)上下分割線の間に大きな隙間が出来るので、ポリパテを盛った。 胴体の主翼取り付け部分と主翼前後縁の間にも隙間が生じるので、その調整も兼ねている。

*** 水平尾翼 ***
練習のつもりで、この部分からスクライビングを開始。
ラインが少々乱れたが、まあこんなものだろう。
翼断面がやや厚いようにも感じるが、気のせいか?
コピー防止の為に翼下面に刻印されているモノグラムの商標
“マルC−MMC” を削りとるのはお約束だ。

*** ドーサル・フィン ***
まずはパネルラインのスクライビング。 裏側に大きな射出ピン痕があるので、削る。
フィンの取付けカバーは 4mm 幅にしたが、4.5mm 幅くらいが適正か?
前縁の曲部は直径 7mm 円の円周の一部を利用。
まず前縁を彫り、縦・横のパネルラインを彫る。 射出ピン痕の修正はその後。
パネルラインが一部省略されているようなので、資料を基に追加すると良い。
アウトラインのところどころに薄いバリがあり、一部ラインがダルくなっているので、
水ペーパーを軽くかけてエッジを整えると良いだろう。 

*** 胴体 ***
ピトー式のエアインティーク内側に押し出しピン痕が見受けられるので、念のためパテ盛り修正。

上品な凸線のパネルラインは位置関係が結構いいかげん。
資料本の図面のラインと異なる、という意味ではない。
スジ彫りを施していて気が付いたのだが、胴体左右の対象位置にある筈のパネルラインが、
左右パーツで微妙にずれていたり、片側だけ消えていたりする。
彫った後に気が付いて、何度修正/彫りなおした事か ... 事前に資料を確認してから彫ること。
パネルラインは単純なので、スクライビングは比較的容易なのだが、
彫った後の修正作業に時間を取られた。 胴体左右パーツの勘合は問題無し。

主翼の後ろ、胴体背中両舷にあるはずのルーバーが省略されている。
片側はパネルラインのモールドすら施されていない。
ルーバーを自作するのが望ましいが、パネルラインの輪郭だけでも彫って、
塗装でごまかすのも良いだろう。
よっぽど無視しようかと悩んだが、結局エバーグリーンの0.4mm厚プラ板などで自作した。
ルーバー用の穴のサイズが左右胴体で揃わず、結構てこずった。

胴体左舷の空中給油プローブ格納バルジは、
プローブ扉の前縁の線が胴体のパネルラインに重なるよう、
接着位置を1mm 前にずらすと良さそうだ。
今回、扉はクローズ位置で接着する。

左右パーツを接着する前にコックピット、前脚室(脚扉含む)、
主脚柱(バルクヘッド含む)を挟み込む必要があるが、
事後の作業の邪魔になるのは『モノグラムだから...』と諦める。
コックピットと主計器盤が胴体に固定しずらい。

胴体に主翼を乗せてみると下に行き過ぎるので、胴体の主翼取り付け部分に
エバーグリーンの0.4mm 厚のプラ板を縁取り状に接着した。
前縁はいい具合に調整できたが、後縁が上がりすぎた。
主翼内翼中央の前縁にシムを噛ませれば良かったのかもしれない。

*** コックピット ***
射出座席 - なぜか GRU-7 がセットされている - 以外は素晴らしい。
主計器盤はメリハリの効いた表現が施されており、惚れ惚れする。
他方、サイドコンソールの表現はかなり甘い。 塗装でごまかすのが現実的だろう。

ハセガワ・モノグラムのキットには、ホワイト・メタルの射出座席 M.B Mk-5 が付属しているが、
形状が今ひとつに感じられたのと、使用経験に乏しい材質だったので、
今回は韓国のレジンパーツ、レジェンド # LF4003 M.B H7 を使う事にする。
これは F-4 用のパーツだが、ヘッドレストが少々小さめなので、M.B Mk.5 のようにも見える。
(レジン・パーツの一部に欠損があったので、在庫処理を兼ねている)
F-8 は Mk.7 も搭載しており、あながち間違いでもないので、これで充分だろう。

*** 主脚/主脚庫 ***
過剰なまでにパーツの一体化を推進するモノグラムらしく、
主脚庫のバルクヘッドと一体整形されている。
パーツの強度確保上、都合が良いのは判る。
ただし、胴体左右を接着する前に組み付ける必要があり、事後の取り回しに不便。
バルクヘッドから切り離す訳にもいかず、組立/塗装作業中は注意するしかない。
スタイルは文句なし。 ムクではあるがタイダウン用リングまでモールドされている。
余力があればリングの中央に穴を開けると良いだろう。 (強度と相談しながらだが)

主脚と一体整形されたバルクヘッドのモールドは、メリハリがあって良いのだが、
脚柱のモールドはエッジが甘くなっているし、押出しピン痕も目立つ。
可能な限りカッターなどで整形すること。
胴体側の主脚庫内からバルクヘッドに向かって配管が伸びているが、
バルクヘッド側には配管の受けのモールドが無いので、
3mm プラ角棒の切れ端を適当に接着してごまかした。

主脚庫の前方側バルクヘッドには何のモールドもないが、今回は手を加えなかった。
プラ板や真鍮線等で適当にでっちあげる事も考えたが、
後方バルクヘッドのディティールとの格差を思うと自作する自信がなかった。


塗装


塗装箇所 使用塗料 備考
機体内部
(表面から見えない部分)
Mr.カラー # 33
『つや消し黒』
光の透け防止
機体内部
コックピット・フロアー
Mr.カラー # 317
『グレー FS36231』
Mr.カラー # 305 『グレー FS36118』で下塗り
計器盤
コックピット後方等
Mr.カラー # 71
『ミッドナイトブルー』
フラット・ベースを追加したが、艶が消えなかった
スミ入れ
ウオッシング
タミヤ・エナメル
XF-63 『ジャーマン・グレー』
ペトロール油で溶いたエナメル塗料をパネルラインに注し、
余分はペトロール油に軽く浸した綿棒で拭き取る。


*** キット評価 ***
上品だが、左右シンメトリーであるはずなのにズレた位置に引かれたパネルライン。
明らかに間違えている射出座席。 ディティールに乏しいサイド・コンソール。
眠い出来の主脚柱(金型の疲労かも知れない)... 等、
一連のモノグラムのキットと比較しても完成度が低いと断じざるを得ない。

キットとしての完成度は低いものの、プロポーションは悪くないので、
製作者が手を加えれば加えるほど、キットも答えてくれる。
パネルラインを彫り、射出座席を交換するだけでも、そこそこの完成品が得られると思う。
ハセガワの、パネルラインが凹線のキットが存在する今、
モノグラムに挑戦せんとする勇者がどれほど居ることやら、はなはだ疑問ではあるが。


参考資料 (順不同)


世界の傑作機(新装版) # 1 ボート F-8 クルーセイダー 文林堂
Detail & Scale Vol. 31 F-8 Crusader by Bert Kinzey
NAVAL FIGHTERS No.16 Vought's F-8 Crusader Part ONE by Steve Pace


ハセガワ・モノグラム 1/48 F-8E クルーセイダー

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