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### 25.Oct.2,016 ###
ITALERI 1/720 CV-60 "SARATOGA"
出来はイタレリ・スタンダード。
イタレリ独特の軟質素材のため、
各部補強工作必須。
バリエーション展開のためだろう、
飛行甲板中央に段差あり。![]()
*** CV(A)-60 サラトガ *** 近代航空母艦の基礎を確立したフォレスタル級空母の2番艦。
サラトガの同型艦は、フォレスタル級のネームシップであるフォレスタル(CV-59)の他、
レンジャー(CV-61)とインディペンデンス(CV-62)の4隻。
大型空母(CVB)として発注されたが、起工直前の1,952年10月、
攻撃型空母(CVA)に改められた。
1,952年12月16日、ニューヨーク海軍工廠で起工。
1,955年10月08日、進水式。
トーマス海軍長官夫人により “CVA-60 サラトガ” と命名された。
1,956年04月14日に竣工、同日海軍に引き渡された。
1,972年06月、攻撃型空母(CVA)から汎用空母(CV)にカテゴリー変更。
1,993年除籍。
基準排水量 60,000 トン / 満載排水量 76,000 トン
全長 316.7m、 全幅 水線 38.5m/最大 76.8m
搭載機数 80〜95機*** 参照資料 ***
<新版>アメリカ航空母艦史 (下記参照)
製 作
*** ITALERI # 520 *** 某模型サークルの '09年07月例会にて、格安で譲って頂いた会員放出品。
パッケージこそ潰れていたが、中身は特に異常なし。 不足パーツも無い模様。
イタレリ製品は、天下のタミヤ様が輸入と国内流通を牛耳って担当している筈だが、
最近とみに入手が難しくなってしまった。 このキットも、近頃はあまり見かけない。
(生産休止中か?) ある意味貴重品かも知れないが、パッケージの限界が近いようで、
保管が困難な事もあり、肩肘張らずに気楽に組み立ててみることにした。
パーツを検めてみると、まず飛行甲板の中央を横断するパーティングラインが目に付く。
フォレスタル級とキティホーク級以降では、飛行甲板のレイアウトが一部異なっているので、
バリエーション展開に対応するため、飛行甲板の金型の後ろ半分をコマ換えする必要に
迫られて生じたのだろう。 パテを盛って修正すれば良いだけの話だが、
ラインが飛行甲板上の凸線モールドを何本も跨いでいるため、少々悩ましい。
*** 船体 ***長い船体は左右分割。 イタレリ独特の柔らかい素材で成型されているため、
船体に限らず、長めのパーツの補強工作は必須だろう。
フルハル・モデルか、ウオーターラインで組むかは選択式。
どちらにするか少し迷ったが、ウオーターラインで組むことにした。
同社のニミッツ級の船体は事実上、喫水線で上下分割されているので、
ウオーターラインで組む事を前提に設計されているように感じられる。
後々、イタレリのニミッツ級とフォレスタル級を並べる事があるのなら、
ウオーターラインで組んだほうが都合が良いだろうと考えたからだ。
船体裏側に用意されている分割ラインに沿ってカッターを軽く走らせれば、
船体上下は簡単に分断できる。
ただし、喫水線のラインは、船底パーツを接着後に調整する必要がある。
まずは喫水線上の船体左右を接着。
これだけでは、長い船体がバキューム・フォームのようにプヨプヨして頼りないので、
補強材代わりに後甲板パーツも同時に接着。 船底パーツ(船体の喫水線の断面)も
接着すれば追加補強工作は不要かと思ったが、そんな単純な話では無いらしい。
船底を固定するガイドが、船体パーツ内部に全く用意されていない。
しかも、船体の喫水線の断面形よりも、船底パーツが気持ち小さいので、
船底が船体内側に埋まってしまう。 船底の位置決めが著しく困難なので、
まずは船底の位置決めガイドを兼ねた補強材を用意する必要があるかもしれない。
その船底パーツ、断面の一部にテーパーがかけてあるので、
パーツに表裏があるようなのだが、どちらが表(外側)なのか判別し難い。
仮組みしてみると、どうやら押出しピン痕の残る方が外側のようである。
押出しピン痕が凹んでいるだけなら無視するのだが、一部盛り上がっている痕もあるので、
ピン痕をパテで埋めたり、水ペーパーを当てて削ったりして整形。
次に、船底パーツの歪みを予防するため、内側・中心線上に補強材を接着しよう。
手元にあった幅 14mm、高さ 5mm の木材を現物合せで適当な長さに切り、
エポキシ系接着剤で船底中央線上(ただし目分量)に接着。
板材の上に船底パーツを置いてパーツの水平を確保し、クランピング・ツールを使って
補強用木材を船底パーツごと固定。 接着剤が固着するまで数日放置。
数日のつもりが、年単位で放置してしまった ...
補強用木材が固着したらクランプを外し、船底パーツを船体にセット。
国産の“ウォーターライン・シリーズ”では、船底パーツは船体の底部に『蓋』をするような形で
接着する仕様になっている。 船底パーツにあらかじめ艦底色を塗装しておいて、
組立 / 塗装の終わった船体に最後に接着すれば、喫水線をマスキングして塗り分ける
手間が省ける一方、一部には『乾舷が船底パーツ分だけくなり過ぎる』との批判もあるようだ。
さて、イタレリの“サラトガ”であるが、船底パーツは船体底部より気持ち小さいので、
船底パーツを船体の底に『落とし蓋』のようにセットする仕様らしい。
つまり、船底パーツは、船体の内側に埋まるように接着すべき『らしい』のだが、
説明書が曖昧で困る。 また、そうは云っても、船底パーツが微妙に大き過ぎて、
船体内側にすんなり収まってはくれない。 現物合わせで船底パーツを削り、
かろうじて船体内部にセットできるまでに調整した上で、無理やり接着。
表側から流し込み式の接着剤を塗り、接着強度を稼ぐため、
内側からエポキシ系接着剤を塗りたくった。
案の定、船体と船底の間に隙間や段差が目立つ。
船体を転覆させなければ見えない部分なので無視すれば良いだけの話なれど、
それができない性分なのが我ながら悲しい。
かくてラッカー・パテとポリ・パテの大盤振る舞い大会となった。
パテを盛り上げ、カマボコ板に巻きつけた #400 の水ペーパーで研ぎ出す。
パテだけを削るように、船体パーツまで削らないように、軽く、力を込めずに研ぐのが難しい。
気が済むまでパテ盛り、研ぎ出し作業の繰り返し。
*** 艦底部の様子 ***
*** 黄色の部分はポリパテ、グレーはラッカー・パテ ***
国産のウオーターライン・シリーズでは考えられないような手間である。
(船体左右が一体成型なら、こんな手間は無用なのだろうが ...
せめて補強用の梁くらい、あらかじめモールドしておいて欲しい)
国産キットが優秀なのか、イタレリが至らないのか。 やれやれ。
船体の上に飛行甲板を接着する事を考えると、船底パーツを省略したほうが
都合が良いかも知れないが、さて、どうしたものか。
悩んだ末に、艦底パーツを船体底部に接着してみたところ、
プヨプヨと頼りなかった船体左右パーツの剛性が明らかに増した。
ただし、剛性が増したのは船底側のみであり、飛行甲板側の頼りなさは相変わらずだ。
長い船体の中央部あたりに補強材を加えるべきだろう。
手元にあった木の端材3本を 5cm 長に切り、船体内部を横切る形にセット。
(端材の寸法が足りなかったので、1本は左右両舷の格納甲板ドアを繋ぐ位置にセット)
エポキシ系接着剤で固定した。 頼りない感じはまだ残っているが、実用上の問題は無さそうだ。
*** 艦内補強材の配置位置参考図 ***
特徴的なエンクローズド・バウは、船体の上に重ねる飛行甲板の裏にモールドされた
窪みに嵌めるのだが、事後変形のためか、船体側の幅がやや狭く、
飛行甲板裏のモールドとの間に僅かな隙間ができる。
しかもバウ(艦首)は接着面が少ないので、割れやすい。 実際、接着面が一回割れた。
割れたついでに、艦首の上のほうの接着面に 0.5mm 厚のプラ板の欠片を差込み、
現物合せで船体幅を調整。 瞬間接着剤と流し込み式接着剤を併用して、艦首を強引に接着。
それだけでは強度不足が懸念されたので、補強材として 3mm プラ角棒の欠片を
艦首裏に接着した。
*** 艦首補強材の参考図 ***
艦首両舷にモールドされた航空機燃料送油管が上方に長すぎて、
飛行甲板裏に船体をセットする際に干渉する。
管の上方を約1mm程、現物合わせで削って調整。
国産キットを見慣れた眼には、乾舷が低すぎるよにも見えるイタレリのレディ・サラ。
これには慣れるしかなさそうだが。問題は喫水線の塗り分けだろう。
*** 飛行甲板 ***断面の全周にパーティングラインがある。 カッターなどで削って整形。
キャット・ウォークの裏側にいくつか、小さな丸い押出しピン痕が見受けられる。
水ペーパー等で削って整形。
上述のとおり、飛行甲板の中央を横断する方向にパーティングラインがくっきりと。
悩んでいても仕方がないので、段差にパテを盛り、水ペーパーで整形。
凸線で表現された甲板上のラインが消えるがやむを得ず。
愛用のスクライビング・ツールで彫り直し。
考えてみれば、実物の甲板上に引かれたラインの多くはペンキで描かれたものだろうから、
スジ彫りするのはいかがなものか ... とも思えるのだが?
*** アイランド ***アイランド基部パーツの上に艦橋や屋根、煙突といった部材を積み上げてゆく構成。
左右分割の基部パーツは天井と床面が抜けた中空の直方体だが、
プラスチックの材質が極端に柔らかい事もあり、左右を接着してもペナペナで頼りない。
0.5mm 厚のプラ板の欠片から 9mm 四方の正方形を切り出し、基部内部に接着。
頼りない補強ではあったが、最低限の働きはしてくれたようだ。
艦橋構造物(P/N : B21, B22, B24, B25)の床面は素通しである。
下から覗かない限り見えない部分ではあるが、床が無いのも寂しいので、
各パーツの裏にポリ・パテを充填、整形。
それにしても各パーツの勘合が芳しくない。 アイランド基部(P/N : B19 & B20)と
戦闘艦橋(P/N : B21)の間に開いた隙間に 0.5mm 厚のプラ板を噛ませて修正したら、
今度はアイランド基部と上部艦橋構造物(P/N : B24)の間に隙間ができて ...
といった具合で、連鎖的に辻褄が合わなくなった。
0.3〜0.5mm 厚のプラ板を適時使用した修正作業の無限ループに突入。
最初に貼った 0.5mm 厚プラ板が厚過ぎたか?
アイランド後方デッキパーツ上に一体モールドされている SPN-35 着艦誘導レーダーの
球形ドームの一部が、成型不良で陥没している。 ラッカー・パテを盛り、整形。
塗 装
塗装箇所 使用塗料 備考 船体
&
アイランド
参考資料 (順不同)
■ 大図解 世界の空母 グリーンアロー出版社 坂本明 著 ■ <新版>アメリカ航空母艦史 世界の艦船
増刊第51集Vol. 551 ■ フォレスタル / サラトガ 丸スペシャル
米海軍空母シリーズ# 86 ■ アメリカ最新空母 CV-62
USS インデペンデンス酣燈社
航空情報別冊
イタレリ・スタンダードな出来はともかく(問題発言?)、サイズが手頃で
パーツ数もさほど多くはないので、製作は楽かと思ったが、さにあらず。
追加の補強工作が必須な船体、無神経な位置に顔を出すパーティングラインや
押出しピンの痕等、国産メーカーのウオーターライン・シリーズに慣らされた
〔甘やかされた?)私のような者には辛い構成である。
『少しはタミヤ等の国産メーカーを見習え!』とまでは言わないが、
イタレリの一層の精進を期待したいものだ。
ITALERI 1/720 CV-60 "SARATOGA"
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