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### Recent UPDATE ###
### 10.Dec.2,011 ###


ブラジル・レベル 1/78 (?)
マーチン P6M-1 シーマスター

ちっちゃいくせに苦労する
インジェクション・キット。
二度と作ってやるもンか
witch img.

B-36大量生産を目論む空軍に、新型巨大空母ユナイティッド・ステーツの建造予算を
横取りされた海軍が、腹いせに試作させた世界初のジェット推進式飛行艇。
名目上は対潜哨戒機であったが、その本質は戦略核攻撃飛行艇であったそうな。
のちにCV(A)-59 フォレスタルの建造が認められたため、お蔵入りとなった。

本キットは、初期のレベル社独特の、いわゆる箱スケール・キットのひとつ。
1,960年前後にレベル社から発売され、日本国内でも入手できたようだが、
中途半端なスケールが災いしたのか、いつしか市場から消えていった。
その後、長い間絶版であったが、1,980年代の初期にアメリカ・レベル社から
『ヒストリーメーカー・シリーズ』のひとつとして再販された。
私も1つ購入したものの、サイズのわりにとてつもなく高額なキットだったため、
なにやらもったいなくて製作できなかった。

それからしばらくして、ブラジル・レベル製のシーマスターが少数、
国内に流通した。 『ブラジル』というところに引っかかるものを感じたが、
リーズナブルな価格に惹かれて(釣られて ...)購入。
帰宅して、レトロチックなパッケージを開けてみると、予感は的中していた。
ブラジルからの長旅の途中で左舷側胴体のパーツが変形し、捩れていたのだ。
歪みのピークは垂直尾翼に収斂し、30〜40度程外側に倒れてしまう。
製作する意欲が萎え、封印して幾星霜。
どうした加減か、いきなり製作を再開することにした。
さて、どうなりますやら ...



製作


まず、スケールに関して。
パッケージに『1/78』と明記してあるが、インターネットを利用して調べてみると、
P6M-2 の全長は約40mらしい。 (ピトー管を含んだ値であるか否かは不明)
P6M-1 も同サイズだとすると、模型の全長が約29cmであるから
約1/138となる。 まあ、1/144とみなして差し支えない、といったところか。

機体の表面にはリベットのモールドが施されているが、小スケールの機体には不釣合いなので、
全て削り落とした。 凸線で表現されたパネルラインも消えたので、モールドをトレースして
彫りなおしたが、主翼のラインはあまりにもウソっぽかったので、ほとんど省略した。

さて、捩れた胴体。
左側は捩れているものの、幸い右側は無事だった。 正常だった右側胴体の
垂直尾翼内側に、補強材として、5cm程になったカッターの古刃を入れ、
エポキシ系接着剤を塗りたくって固定。 一昼夜放置して、右側の垂直尾翼が
ガチガチに固まったら、あとは力技で胴体左右を接着。
捩れた胴体左側後方には、再びエポキシ系接着剤を塗りたくり、
輪ゴムなどで固定して、もう一昼夜放置。 捩れが最大になる垂直尾翼は、
根元を指でしごいたりして、なるべく内側に向くようにクセをつけた上で、
両側に当て木をし、大きなクリップで挟み込んで固定した。
垂直尾翼はまだ少し、左に傾斜しているようにも見えるが、許容範囲内としておく。
これ以上の修正作業は私には荷が重い。 胴体下面、艇体構造部分のエッジも
ダルいので、ポリパテを盛って、削りだした。 まだラインがヨレていて見苦しいが、
このレベルが私の限界であるらしい。

左右一体整形の主翼は、両端がやや上に反っているようにも見えるが、
修正できなかった。 前縁がシャープ過ぎる反面、後縁はダルくて、とても
翼型には見えない。 修正は困難。 とにかく後縁だけはシャープに仕上げようと、
棒ヤスリなどを動員して、ひたすら削る。 
両主翼後縁にいわく有り気に突き出した棒(?)は、整形にじゃまだし、
実機には存在しないようなので、整形作業中に折れたのを幸い、そのまま削り取った。

胴体と主翼の間にはかなりの隙間が生じる。 接着前にポリパテを充填し、
整形したがまだ足りない。 プラスチック用接着剤も効きそうに無いので、
エポキシ樹脂系接着剤を塗りたくって接着。 事前修正しきれず、空いたままの
隙間にポリパテを詰めなおし、整形。 案の定、胴体と主翼の隙間がタイトで、
ヤスリがけが難しい。 ポリパテを盛って削りを繰り返し、なんとか納得できそうな
ラインが現れたところで、ヤスリ掛けで消えたパネルラインを彫りなおし、
翼端のフロートと胴体後尾の銃座を接着。 翼端と翼端フロートの間に隙間が生じる。
ギャップにポリパテを詰めて、整形。 水平尾翼の付け根にも大きな隙間が
開いていたので、充填材代わりにエポキシ樹脂系接着剤を使用。
水平尾翼は上半角が付いているため、角度決めが難しい。 少し傾いだか?
一晩そっと放置して、接着剤が乾いたら、またポリパテを使う。
ポリパテを盛って削って、また盛って ... の繰り返し。

私の場合、航空機模型にサーフェイサーを使う事はまず無いのだが、ポリパテを派手に使った
今回は別。 タミヤのファインサーフェイサー(缶スプレー)をそのまま吹き、表面処理。
彫ったパネルラインの歪みやら、整形した箇所の傷痕やらの修正に追われる。
埋まったパネルラインを彫り直そうとして、さらにラインが歪む。
サーフェイサーの影響で梨地状になった表面を水ペーパーで軽く磨くと、
主翼後縁に開いた細かな穴を見つけてしまう。 少しでもシャープにしようと
削ったところがやり過ぎたようだ。 パテを摺り込み整形作業。
サーフェイサーを吹きなおして確認すると、また新たな穴が ... の無限ループ。
使ったラッカー・パテが古い為か、粒子が細かいのは良いのだが、サーフェイサーのシンナー分に
パテが負けるのだろう。 サーフェイサーを吹き付ける度にパテが溶け、穴が埋まりきらない。
ヤケになり、『黒い瞬間接着剤』まで投入。 パテよりはマシ、といった程度の使い心地。
やっとの思いで翼のピンホールを埋め、塗装を始めようとしたら、
今度は胴体のパーティングラインが割れている。 なぜ?
こうなったら仕方が無い。 カッターで削ってわざと隙間を広げ、ポリパテを充填。
整形し、塗装を始めたら、また別の隙間が ... 変形した胴体パーツを力技で接着した結果、
胴体が外側に広がろうとするのか、あるいは素材のプラスチックになにか問題でもあるのか?
そしてまた、パテ盛り・整形作業・サーフェイサーの無限ループ ...
とにかく、整形作業でここまで苦労した模型は初めてである。

4基あるエンジン・ノズルは機体とは別に塗装を行い、機体の組立 / 塗装作業が終了後に
取り付ける予定だったが、よくよく確認してみると、基部に無視できない隙間が生じる。
胴体に主翼、フロート等、全ての部品を接着後にノズルを取り付け、整形作業を行う羽目に陥る。
胴体が邪魔で、整形作業が捗らない。 なんとか形は整えたものの、仕上げの粗さは否めない。

キャノピーがまた大問題。
厚さ0.2〜1.0mm位の薄いパーツに5mm角はあろうかという太いランナーが直接生えている。
愛用のエクザクト・ソーでランナーをぶった切り、棒ヤスリや水ペーパーを総動員して
ひたすら削り、磨いたが、厚みが不均一なキャノピー・パーツは変形するばかり。
あまり力を加えると割れそうだったので、とうとうランナー痕を消すに至らず。
内側にも傷があったので、表裏とも同時に磨いたが、傷を深めるばかり。
1,000番〜2,000番の水ペーパーを使って再度磨き直し。
ペースト状 / 液状コンパウンドと金属磨き用の“ピカール”まで動員し、
綿棒を使って慎重に磨く。 そこそこ透明度は取り戻したが、これが精一杯。
キャノピーの内側にMr.Color #101“スモーク・グレー”を吹き付けてごまかした。
キャノピーの末端を削り、少しでも胴体にフィットするよう調整してみたが、
ぴったりフィットするわけが無い。 スキマに瞬間接着剤を流し込み、
400 / 600 / 800 / 1,000 / 1.200 / 1,500 番の水ペーパーを順に使って整形。
空気中の湿気を吸って曇るかと心配したが、コンパウンドで磨いてみたら、
意外に透明度を取り戻しているばかりか、キャノピー表面のヒケも埋まって、一石二鳥だった。

たかが 1/144相当のキットに、ポリパテとエポキシ樹脂系接着剤、瞬間接着剤、サーフェイサーが
どれだけ必要だったことか ... ブラジル・レベル、侮りがたし。



塗装


正直、よく判りません。 説明書になにやら書いてはあるのだが、
コドモなので スペイン語なので、読めませ〜んっ !!
(* 『ピタゴラ・スイッチ』風でどうぞ *)
上面 シープレン・グレイ(GSIクレオス #339 エンジングレーが近似?)
下面 ホワイト(同 #316 ホワイト)で良いとは思うのだが ... 自信無し。

困りながら自宅の本棚を漁っていたら、“NAVY AIR COLORS Vol.2”に目がとまる。
その P.50 に1葉、XP6M-1 の実機写真があり、キャプションに
『シープレーン・グレイ / インシグニア・ホワイトのスペシャル・パトロール
 プレーン・スキム。 このスキムは 1,955年2月23日に発令された
 MIL-C-18263 (Aer) に拠って定められた』とある。
{ MIL-C-18263 (Aer) に関しては、“NAVY AIR COLORS Vol.2” P.43 を参照 }
シープレーン・グレイ:F.S.26081 とエンジングレー:F.S.16081 は、
本質的には同じ色で、前者が半艶、後者が艶有りである点が唯一の相違である由。

かくして機体塗装色の根拠は見つかったものの、ボックスアートに描かれている
ブルー(シーブルー?)のP6M-1のイメージも捨て難く、懊悩はさらに深まるのであった。

とりあえず、エンジン・ノズルの内側と、キャノピーが未装着のためサーフェイサーが
吹き込んだコックピット内部を“艶消し黒”で塗装。
コックピット内部は全くのがらんどうだし、キャノピーは整形作業の失敗で傷だらけ。
粗隠しの為、キャノピーには裏面からMr.Color #101“スモーク・グレー”を吹き付けたが、
厚く塗りすぎて、塗料が流れてしまった。 塗料を剥がし、塗りなおすのがベストなのだが、
時間が無い。 両目を瞑ってキャノピーの裏側の塗装は終了とした。

ノズルは下に“艶消し黒”を塗り、“黒鉄色”を上に重ねた。

塗装を始めても整形作業が終わらない。 整形作業をやりなおすたびにサーフェイサーが剥がれる。
その都度サーフェイサーを吹きなおしていたが、サーフェイサーの層が厚くなりすぎるは
面倒になるはで、最後はそのまま放置。 サーフェイサーの剥がれた部分には、
たまたま手元にあった Mr.Color #332“ライトエアクラフトグレー”をエアブラシで吹きつけて、
下地を整えた。

機体下面色は Mr.Color #001“ホワイト”をそのままエアブラシで塗装。



参考資料 (順不同)


NAVY AIR COLORS Vol.2 1,945 - 1,985 Squadron/signal Publications

ぴったり合うパーツなど一つも無いばかりか、パーツ同士の間には広い隙間が空くばかり。
ポリパテやエポキシ樹脂系接着剤が無ければ、とても組み立てられなかった。
ブラジル製よりは高精度のアメリカ・レベル版であったろうと思うが、
この国にまともなパテすら無かった時代に、このキットは売られていたのだし、
このキットを組んでいた人だっていたのだ。 そう考えると、感無量。
失礼な言い草だが、当時のモデラーの凄さが少し判ったような気がした。

*** 追記 ***
脚の無い飛行艇。 しかも小スケールなので余計に背が低い。 普段はともかく、
展示会等に出すのなら何らかのスタンドが欲しいところ。 自作する根性は無いので
適当な代用品を探す。 1/100 の MG ボール(Ver. Ka)のスタンドに目がとまる。
櫓の幅が艇体を挟むのにちょうど良い。 主翼の下に噛ませて、高さを稼ぐことにする。
土台に若干のヒケが見受けられたのでパテで修正。 櫓に施されていた細かな彫刻を
痛めないよう、ハンドピースでサーフェイサーを吹きつけようと思っていたが
面倒になり、タミヤのファインサーフェイサー(缶スプレー)をそのまま吹く。
土台のみ水ペーパーで軽く磨き、エアブラシで Mr.Color #33“艶消し黒”を下塗り。
Mr.Color #71“ミッドナイトブルー”を上に吹き重ねた。
*** 追記 その2 ***
ここしばらく世界、いや宇宙で唯一のP6Mのインジェクション・キットとの名声を
欲しいままにしてきた“レベル”の半端スケールキットでしたが、
2.009年にフランスの“マッハ2”から1/72のキットがリリースされてしまい、
『宇宙で唯一』のタイトルを返上することになりました。
聞くところに拠れば、“マッハ2”のP6Mは、“マッハ2”にしては良い出来だったそうです。


ブラジル・レベル 1/78 (?)
マーチン P6M-1 シーマスター


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