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### Recent UPDATE ###
### 14.Dec.2,011 ###


イタレリ 1/48
Lockheed / Martin S-3B VIKING

懐かしいエッシーのキット。
素材が柔らかいので、
翼の補強工作は必須
witch img.

*** ITALERI KIT # 2623 ***
ITALERI 1/48 S-3 PKG. img
ロッキード(& マーチン)S-3 ヴァイキング。
最初の艦載ジェット対潜哨戒機にして、最後の固定翼艦載対潜哨戒機 ... ?

メイン・コンストラクターこそロッキードとなっていますが、
同社には艦上機の開発経験が不足していたため、
実際の機体開発は、艦上機の経験が豊富なL.T.V.で行われたとか。
ソ連消滅に因る冷戦構造の崩壊から、1,999年4月に対潜任務を解かれ、
F-14と相前後して全機用途廃止の運命にあるヴァイキング。
神奈川県の NAF 厚木基地を本拠とした CVW-5 の一員として、
長らく親しまれた VS-21 も帰国し、既に解隊された現在、
もう日本で同機の姿を見ることすら叶いません。
空母の飛行甲板がF/A-18まみれの現在、あの丸っこくて愛嬌のある姿が懐かしく、
それならせめて模型でと思い、製作を開始しました。

高バイパス比のターボファンエンジン(G.E. TF-34-GE-2)を
装備したヴァイキングは、巡航飛行時の燃費は良かったのでしょうが、
スロットルのレスポンスに若干のタイムラグが生じるのでしょう。
微妙なスロットル操作を要求される、着陸時のような場合は大変そうでした。
基地滑走路のエンドで同機を見ていると、神経質と思われるほど
エンジンの音色が変化を繰り返し、頻繁に微調整を加えられている
スロットル操作の様子が伺えたものでした。
電気掃除機にも例えられるあの独特なエンジン音をもう一度、
叶うことなら聞いてみたいものです。


製 作


キットはもともとエッシー製だが、同社が活動停止後、AMT/ERTL社に金型が移り、
一部改修されて"ES-3"として再販された。
(AMT/ERTLから"S-3"は発売されなかったが、先祖返りは容易だった)
AMTが航空機模型から撤退を表明したため、
今度はイタレリにお鉢が回った、ということらしい。
金型はAMTで改修されたままらしく、AMT/ERTL時代に追加された
ブレード・アンテナ類もモールドされたまま。

## どうせなら、"ES-3"用のパーツ
## (背部アンテナ類やバディ・ポッド・システム、増槽等)も
## そのまま残して欲しかった ...

パネル・ラインはエッシー譲りのシャープな凹線だが、一部擦れて不鮮明になっている。
気になる部分のみ彫り直せば良い。

最大の問題は、機体のサイズの割りに素材のプラスチックが柔らかめで、
そのまま組み立てると変形したり、接着面が割れる恐れがある点であろう。
胴体はまだしも、スパンの長い主翼はまるでヴァキューム・フォームのように頼りなく、
補強が欠かせない

補強材は、翼上下パーツの内側にピッタリ接している必要は無い
指等で主翼パーツを摘んだ時、断面形が過度に変形さえしなければ良い
過度の変形は、パーツの接着面の割れを誘発するが、
接着面が割れない程度の軽微な変形まで防止する必要は無い

補強材は1.2mmプラ板を切り出して製作。
内翼部と外翼部では下半角が変化しており、それをトレースしながら
プラ板を切り出すのは困難なので、変化する部分で補強材を二分割。
現物合せでプラ板を加工し、下翼パーツに瞬間接着剤で仮止め。
主翼上下を合せてみて、表面に不自然な盛り上がりや、
翼上下パーツに隙間が生じないかチェックし、エラー部分は再加工。
最後にエポキシ系接着剤を翼下面パーツに塗りたくって、補強材を本接着。

## 翼断面の変形を防止すれば充分なので、
## 補強材は翼上面パーツには接着しない。
## 翼断面形に悪影響を及ぼす恐れがあるからだ

言語道断なほどいいかげんな補強工作だが、最低限の目的は果たしたと思う。
"P-カッター""ニコルソンの金ヤスリ"を重宝した。
hokyou img.
*** 補強を施した両主翼下面パーツの様子 ***

上下2分割式の水平尾翼も補強した方が良いだろう。
3mmのプラ角棒を適当に削って、内側にセットしたが、調整が甘かったらしく、
厚みが微妙に不均一になったようで、右舷側が胴体に嵌り難くなってしまった。

主翼、水平尾翼の補強さえ終われば、製作上の峠は越えたも同然だが、
問題は機体の外形上のリサーチだろう。 まとまった資料が無いのだ。
情けない話、A型とB型の差異がよく判らないし、
作っているキットがどちらの型なのかすら判らずに作っている始末である。
(アヴィオニクスの変更以外、外形上の変更点はどこなのか、御教示頂ければ幸いです)

前述したとおり、S-3Bは1,999年4月にASWの任を解かれ、
ASW任務は以後、対潜哨戒ヘリ部隊に引き継がれた。
S-3Bには空中給油などの新たな任務が割り当てられ、外形的な変化としては、
不要となった機体尾部のMADブームが取り外され、蓋がされた。
ただし、任を解かれて即、MADブームが取外された訳ではないらしく、
航空機雑誌の写真を見る限りでは、暫く(1年位?)の間
ブームを付けたまま飛んでいた例もあるようだ。
母艦が帰港した際などに行われる、機体のスケジュール整備のついでに
取外し作業も行われたのだろうと思われるが、あくまで想像の域を出ない。
蓋のされた尾部の様子は、空母キティホークの艦載機を追った写真集
“HAWK FIVE TEAM”に1葉、鮮明な写真がある。
もし MADブームを取り外した状態を再現するのなら、MADブームのロッドから、
先端の半円球部分を切り離し、ロッドを押し込んだ状態で固定すれば充分であろう。

型の差異が判らない以上、怖いもの知らずのストレート組みで行くしかない。
『B型は全機、MADブームを取り外している』と教えて頂いた事もあったが、
それはASW任務を解かれた結果論だと思う。
つまり、1,999年4月までは、S-3BのMADブームは健在であった筈だ。
MADブームが無い対潜哨戒機は、らしくない。 このまま作ってしまおう。
*** 追補 (08.Oct.2,010) ***
S−3シリーズのA型とB型の相違は、主に内蔵アヴィオニクス
機器の換装であり、外観上の差異はほとんど無い。
外観上の唯一の相違点は、胴体左舷・機首側面、
モデックス・ナンバーが描いてあるあたりの直下、
APU排気口の直前の小さな楕円形状の排気口の有無
(A型には無い)であるが、少数のA型機にレトロ・フィットされた
例もあり、絶対的な識別点とは成り得ない、との事である。
*** 参照:世界の傑作機(新装版) # 137 P.44 ***
がらんどうの胴体内側を誤魔化す為、胴体内側は GSI クレオスの通称ラッカー系塗料
Mr. Color #33 艶消し黒を、エアブラシで吹き付けて塗りつぶし。
胴体内側・前席コックピットの辺りとコックピット・パーツは
Mr. Color #33 艶消し黒をエアブラシで吹き付けた後、
同じく # 307 グレー FS36320 で上塗り。 少し青みが強すぎるが、まあ良かろう。


塗 装


以下、GSI クレオスの溶剤系アクリル樹脂塗料(通称ラッカー系塗料)Mr.Color
タミヤのエナメル系塗料タミヤ・エナメルと略称する。

塗装箇所 使用塗料 備考
胴体内側 Mr.Color #33
艶消し黒
光の透過防止もあるが、後部乗員用窓から覗けてしまう、
がらんどうの胴体内側を誤魔化す意味合いの方が強い
MADブーム(ロッド) Mr.Color #01
ロッドの部分のみ。 先端の半円球状部分は後で塗装。


参考資料 (順不同)


Lockheed S-3B VIKING LOCK ON #023 Verlinden Publications
ロッキード S-3 バイキング 世界の傑作機
新装版 #137
文林堂
HAWK FIVE TEAM
空母キティホークとCVW-5
徳永 克彦
黒澤 英介
イカロス出版 ISBN4-87149-369-5


イタレリ 1/48
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